
Trash Mountain Video
-the
Infomation-
You'll Never Miss Them!
映画史の闇に埋もれた劇場&TV公開作、レアな未公開映画を掘り起こす、
真の意味で「カルト」なレーベルが遂に日本にも誕生!
その名も「TRASH MOUNTAIN VIDEO」!!
傑作ジャッロ!と絶賛されながら、日本では未公開のままだった
「ソランジェ
残酷なメルヘン」と、世界的にカルトな人気を誇る異色エロス監督
ワレリアン・ボロフツィクの「修道女の悶え」を筆頭に、
マニア&ファン悶絶のラインナップが続々登場!!
・・・と紹介し続けて、はや数年。
通称・トラマンがリリースしてきたタイトルもかなりの本数になりました。
更新もままならないグータラ管理人ですが、改めてこのレーベルを
応援する決意新たに、トラマンを盛り上げていきたいと思います。
TRASH
MOUNTAIN VIDEO LIST
(特記以外は各単品、税抜\4800・税込\5040)
●2003年リリース
「ソランジェ 残酷なメルヘン」(72年・イタリア) 監督:マッシモ・ダラマーノ 出演:ファビオ・テスティ/クリスティーヌ・ガルボ 「修道女の悶え<ヘア無修正完全版>」(77年・イタリア) 監督:ヴァレリアン・ボロヴツィク 出演:リジア・ブラニス/マリナ・ピエロ |
「ナイトチャイルド」(75年・イタリア) 監督:マッシモ・ダラマーノ 出演:リチャード・ジョンソン/ニコレッタ・エルミ 「濡れた貴婦人<ヘア無修正完全版>」(84年・伊=仏) 監督:ヴァレリアン・ボロヴツィク 出演:ラウラ・ベッティ/マリナ・ピエロ |
| 発売日:2003/4/25 | |
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「愛の島ゴトー」(68年・フランス) 監督:ヴァレリアン・ボロヴツィク 出演:リジア・ブラニス/ピエール・ブラッシャー 「デリリウム」(72年・イタリア) 監督:レナート・ポルセリ 出演:ミッキー・ハージティ/リタ・カルデローニ |
「狼女の伝説<ヘア無修正ハードコアバージョン>」(77年・イタリア) 監督:リノ・デ・シルヴェストロ 出演:アニク・ボレル/ハワード・ロス 「声なき殺人者」(72年・イタリア) 監督:ウンベルト・レンツィ 出演:キャロル・ベイカー |
| 発売日:2003/6/27 | |
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「ヴァンピロス・レスボス」(70年・ドイツ) 監督:ジェス・フランコ 出演:ソリダッド・ミランダ/エヴァ・ストロンベルグ 「シー・キルド・イン・エクスタシー」(70年・ドイツ) 監督:ジェス・フランコ 出演:ソリダッド・ミランダ/フレッド・ウィリアムズ |
「影なき淫獣」(73年・イタリア) 監督:セルジオ・マルティーノ 出演:スージー・ケンドール/ティナ・オーモン 「暴行列車」(75年・イタリア) 監督:アルド・ラド 出演:マーシャ・メリル/ラウラ・ダンジェロ ヴァレリアン・ボロヴツィク監督作品集 革命エロティシズム DVD-BOX】 収録ディスク:「濡れた貴婦人<ヘア無修正完全版>」 「修道女の悶え<ヘア無修正完全版>」「愛の島ゴトー」 (税抜\14400・税込\15120) |
「恍惚の悪魔アカサヴァ」(71年・ドイツ=スペイン) 監督:ジェス・フランコ 出演:ソリダッド・ミランダ/フレッド・ウィリアムズ |
「X-312/フライト・トゥ・ヘル」(71年・・ドイツ=スペイン) 監督:ジェス・フランコ 出演:エヴァ・ストロンベルグ/ポール・ミュラー 「ヴァージン・レポート<ヘア無修正ハードコア版>」(71年・ドイツ) 監督:ジェス・フランコ 出演:ハンス・ハスJr./エヴァ・ガーデン |
「スパズモ」(74年・イタリア) 監督:ウンベルト・レンツィ 出演:ロベルト・ホフマン/スージー・ケンドール 「ジェーン・バーキンinヴェルヴェットの森」(72年・イタリア) 監督:アントニオ・マルゲリティ 出演:ジェーン・バーキン/セルジュ・ゲンズブール |
「死んでいるのは誰?」(72年・イタリア) 監督:アルド・ラド 出演:ニコレッタ・エルミ/ジョージ・レーゼンビー 「ザ・シャウト/さまよえる幻響」(78年・イギリス) 監督:イエジー・スコリモフスキー 出演:アラン・ベイツ/ジョン・ハート 「雨の午後の降霊祭」(65年・イギリス) 監督:ブライアン・フォーブス 出演:キム・スタンレー/マーク・エデン |
「ハーレム」(67年・イタリア=ドイツ) 監督:マルコ・フェレーリ 出演:キャロル・ベイカー/ガストーネ・モスキン 「呪われた修道院」(80年・イタリア) 監督:ステファン・オブロウスキー 出演:フランカ・ストッピ/スーザン・フォゲット |
●2004年リリース
「デビルナイト」(72年・イギリス) 監督:ピーター・サスディ 出演:クリストファー・リー、ピーター・カッシング 「小さな目撃者」(70年・イギリス) 監督:ジョン・ハフ 出演:マーク・レスター/ライオネル・ジェフリース |
「闇のバイブル/聖少女の詩」(69年・チェコ=スロヴァキア) 監督:ヤロミール・イレシュ 出演:ヤロスラヴァ・シャレロヴァ/ヘレナ・アニェゾヴァ 「ナインス・ハート」(78年・チェコ=スロヴァキア) 監督:ユライ・ヘルツ 出演:ジュリー・イウリストゥヴァ/オンドレイ・パヴェルカ 「モルギアナ」(72年・チェコ=スロヴァキア) 監督:ユライ・ヘルツ 出演:イヴァ・ヤンズロヴァ/ジョセフ・アブラハム 【チェコ怪奇骨董幻想箱 Vol.1 GOTH-BOX】 収録ディスク:「闇のバイブル/聖少女の詩」「モルギアナ」「ナインス・ハート」 (税抜\14400・税込\15120) |
「カルパテ城の謎」(81年・チェコ=スロヴァキア) 監督:オルドリッチ・リプスキー 出演:ミハイル・ドチョロマンスキー/ヤン・ハルトゥ 「アデラ/ニック・カーター、プラハの対決」(77年・チェコ=スロヴァキア) 監督:オルドリッチ・リプスキー 出演:ミハイル・ドチョロマンスキー/ルドルフ・フルシンスキー 「レモネード・ジョー/或いは、ホース・オペラ」(64年・チェコ=スロヴァキア) 監督:オルドリッチ・リプスキー 出演:カレル・フィアラ/クヴェタ・フィアロヴァ 【チェコ怪奇骨董幻想箱 Vol.2 リプスキーBOX】 収録ディスク:「カルパテ城の謎」「アデラ/ニック・カーター、プラハの対決」 「レモネード・ジョー/或いは、ホース・オペラ」 (税抜\14400・税込\15120) |
「ブロンドの恋」(65年・チェコ=スロヴァキア) 監督:ミロス・フォアマン 出演:ハナ・ブレチューバー/ウラジミール・プホルト 「火事だよ!カワイ子ちゃん」(67年・チェコ=スロヴァキア) 監督:ミロス・フォアマン 出演:ヤン・ヴォストゥルチル/ヨゼフ・シェバーネク 「高速ヴァンパイア」(82年・チェコ=スロヴァキア) 監督:ユライ・ヘルツ 出演:イジー・メンツェル 【チェコ怪奇骨董幻想箱 Vol.3 ヌーベルヴァーグ&ニューウェイヴBOX】 収録ディスク:「ブロンドの恋」「火事だよ!カワイ子ちゃん」「高速ヴァンパイア」 (税抜\14400 税込\15120) |
「ドリラー・キラー」(79年・アメリカ) 監督:アベル・フェラーラ 出演:キャロリン・マーズ/ジミー・レイン |
「スローター・ホテル<ヘア無修正完全版>」(71年・イタリア) 監督:フェルナンド・ディ・レオ 出演:クラウス・キンスキー/マーガレット・リー |
「ファイブ・バンボーレ」(70年・イタリア) 監督:マリオ・バーヴァ 出演:エドウィージュ・フェネシュ/ウィリアム・バーガー 「殺意の海<ヘア無修正版>」(71年・イタリア) 監督:ウンベルト・レンツィ 出演:キャロル・ベイカー/ジャン・ソレル |
「痴漢ドワーフ」(72年・アメリカ) 監督:ヴィダル・ラスキ 出演:トルベン/アンヌ・スパロウ 「大人になる前に・・・<ヘア無修正完全版>」(78年・イタリア) 監督:フェルナンド・ディ・レオ 出演:グロリア・グイダ/リリ・カラーチ 「ヴァージン・スローター」(77年・アメリカ) 監督・出演:フレデリック・R.フリーデル 出演:レスリー・リー/ジャック・キャノン 「ドーン・オブ・ザ・デッド・チャイルド」(80年・アメリカ) 監督:ロバート・ヴォスカニアン 出演:ローレル・バーネット/ロザリー・コール |
「ルル<ヘア無修正完全版>」(80年・フランス=ドイツ=イタリア) 監督:ヴァレリアン・ボロヴツィク 出演:アンネ・ベネント/ミケーレ・プラチド 「オカルトポルノ/吸血女地獄<ヘア無修正完全版>」 (73年・スウェーデン=ドイツ) 監督:ジョセフ・W.サルノ 出演:マリー・フォルサ/ナディア・ヘンコウ |
「コフィン・ジョーの おまえの魂、いただくぜ!!!」(64年・ブラジル) 監督・出演:コフィン・ジョー 「コフィン・ジョーの おまえの死体も乗っとるぜ!!!」(67年・ブラジル) 監督・出演:コフィン・ジョー 「コフィン・ジョーの ジョーの世界はちょっと凄いぜ!!!」(68年・ブラジル) 監督・出演:コフィン・ジョー 【コフィン・ジョー DVD-BOX Vol.1 黒いボサノヴァ編】 収録ディスク:「コフィン・ジョーの おまえの魂、いただくぜ!!!」 「コフィン・ジョーの おまえの死体も乗っとるぜ!!!」 「コフィン・ジョーの ジョーの世界はちょっと凄いぜ!!!」 +「コフィン・ジョーの ジョーの素顔はもっと凄いぜ!!!」(BOXのみの特典) (税抜\15000・税込\15750) |
●2005年リリース
| 発売日:2005/1/28 | ||
「コフィン・ジョーの 獣が目を覚ましちまうぜ!!!」(69年・ブラジル) 監督・出演:コフィン・ジョー 「コフィン・ジョーの 人間終わってるぜ!!!」(71年・ブラジル) 監督・出演:コフィン・ジョー 「コフィン・ジョーの 狂った心で夢を見てるんだよ!!!」(78年・ブラジル) 監督・出演:コフィン・ジョー 【コフィン・ジョー DVD-BOX Vol.2 サイケデリック・ブラジリアン編】 収録ディスク:「コフィン・ジョーの 獣が目を覚ましちまうぜ!!!」 「コフィン・ジョーの 人間終わってるぜ!!! 「コフィン・ジョーの 狂った心で夢を見てるんだよ!!!」 +「コフィン・ジョーの 8・1/2!!!」(BOXのみの特典) (税抜\15000・税込\15750) |
<2in1> シリーズのリリースがスタート!
闇に埋もれた劇場&TV公開作、レアな未公開映画を掘り起こす、
という意味では絶好のレーベル"2in1"シリーズが遂にスタート!
1枚で2度楽しめるラインナップを順次ご紹介します。
「地球最後の男」(64年・イタリア=アメリカ)& 「人類SOS!」(62年・イギリス)(2in1) 監督:シドニー・サルコウ&ウバルド・ラゴーナ(地球最後の男) 出演:ヴィンセント・プライス/エマ・ダニエリ(地球最後の男) 監督:スティーヴ・セクリー/フレディ・フランシス(人類SOS!) 出演:ハワード・キール/ニコール・モーレイ(人類SOS!) |
「サディスト」(62年・アメリカ)& 「とむらいレストラン」(67年・アメリカ)(2in1) 監督:ジェームズ・ランディス(サディスト) 出演:アーチ・ホール・Jr/ヘレン・ハーヴェイ(サディスト) 監督:T・L・P・スワイスグッド(とむらいレストラン) 出演:レイ・ダニス/ウォーレン・オット(とむらいレストラン) |
「ザ・ゾンビ/黒騎士のえじき」(73年・スペイン)& 「メサイア・オブ・デッド」(73年・アメリカ)(2in1) 監督:カルロス・アウレド・アロンソ(ザ・ゾンビ) 出演:ポール・ナッシー(ハシント・モリーナ)(ザ・ゾンビ) 監督:ウィラード・ハイク/グロリア・カッツ(メサイア・オブ・デッド) 出演:マイケル・グリアー/マリアンナ・ヒル(メサイア・オブ・デッド) |
「恐怖の足跡」(61年・アメリカ)& 「ナイト・タイド」(61年・アメリカ)(2in1) 監督・製作・出演:ハーク・ハーヴェイ(恐怖の足跡) 出演:キャンディス・ヒリゴス/シドニー・バーガー(恐怖の足跡) 監督:カーティス・ハリントン(ナイト・タイド) 出演:デニス・ホッパー/リンダ・ローソン(ナイト・タイド) |
| 旧作を掘り起こせ! |
トラマンがリリースした作品から、お勧めの1本を紹介します!
「暴行列車」 |
クリスマス休暇に賑わうドイツの町。 留学中の女学生リーザは、遠く離れた家族のもとへ帰省するため、 友人のマーガレットと一緒に列車で故郷イタリアへと向かう。 だが、その列車には警察に追われる二人のチンピラが逃げ込んでいた。 好奇心旺盛な彼女たちは、気さくな態度で近づいてきた 彼らと打ち解け、車掌から身を隠す手伝いをする。 夜。国境を越え、途中で列車を乗り継いだリーザたちの前に、 再びチンピラ二人組が現れた。彼らは強引に彼女たちの個室に 居座ると、やがて暴力的な本性をむき出し始める。 たまたま乗り合わせた一人の中年女もなぜか彼らのゲームに加わり、 リーザとマーガレットをいけにえに残忍な宴を愉しむのだった。 傷つき、汚され、追いつめられていく少女たち。 夜通し続いた陵辱の果て、ついにナイフの刃先が リーザの秘部に向けられる。列車がトンネルの闇を抜け、 客室を再び朝日が照らし出した時、 そこにはむごたらしい光景が広がっていた──。 |
理不尽な暴力のえじきとなる少女たちと、その両親の凄惨な 復讐を描いた問題作。ウェス・クレイヴン監督作品『鮮血の美学』(72)の 大ヒットを受けたリップオフ企画を、『死んでいるのは誰?』(72)の職人監督 アルド・ラドが巧みな演出で料理した、美しくも痛ましい残酷譚である。 ビデオリリース時のタイトルは『血のコンパートメント −女たちの深夜特急−』。 リーザを演じるラウラ・ダンジェロは、大きな目と愛らしい唇が印象的な黒髪の美少女。 本作が唯一の主演作というのが惜しまれる。マーガレット役のアイリーン・ミラクルは、 後にアラン・パーカー監督の『ミッドナイト・エクスプレス』(78)や、 ダリオ・アルジェント監督の『インフェルノ』(80)などに出演。 二人の可憐な美しさと瑞々しい演技が、物語の悲惨さをより一層際立たせている。 圧巻は謎の女を演じるマーシャ・メリル。『サスペリアPART2』(75)などでも お馴染みの彼女が、サディストでニンフォマニアのインテリ女というハマリ役を 嬉々として怪演。作品の暗部を一手に担う彼女の存在感は、 他を圧倒してあまりある。安っぽい犯罪者コンビを演じるフラヴィオ・ブッチと ジャンフランコ・デ・グロッシも、まさに適材適所。 音楽を手がけたのは巨匠エンニオ・モリコーネ。ハーモニカの不穏な調べを 効果的に用いて、サスペンスを盛り上げている。ギリシャのロック歌手、 デミス・ルソスが映画の内容とは逆説的な歌詞を朗々と歌い上げるオープニング・ テーマは、かつてモリコーネがアニメ映画『ペイネ 愛の世界旅行』(74)のために 書き下ろした主題歌「A FLOWER’S ALL YOU NEED」の流用である。 アルド・ラド監督は、流麗とさえいえるサスペンス演出と巧妙なシーン構成によって、 少女たちの末路を最も効果的に──つまり最も痛々しいかたちで観客に見せつける。 そしてそこから始まる壮絶な復讐劇は、観客にも登場人物にも一片の救いも与えない。 誰一人として報われない、作り手の神経を疑いたくなるような強烈な悪意に 満ちた作品ながら、その完成度は非常に高い。儚く散る少女たちの 悲劇をうたう叙情性と、情け容赦ない暴力描写、そして心の底から 性悪説を信じるシニカルな視線が職人的演出の中に共存する本作は、 まさしくユーロトラッシュムービーの至宝と言えよう。 (岡本敦史) 監督のアルド・ラドは、ダリオ・アルジェントの「歓びの毒牙」(69)で |
「ソランジェ/ |
ソランジェ。ロマンチックでありながら、 どこか物悲しい憂いを秘めた響き。この映画はそんな不思議な 名前を持った少女を巡って起きる、恐ろしくも悲しい連続殺人の 展末を描いたイタリア製、ミステリーサスペンスだ。 こうした謎解き物は、本国イタリアではGiallo(ジャッロ)と呼ばれ、 70年代を中心に大衆向けに量産された歴史を持つ。 本作はダリオ・アルジェント監督の「サスペリア PART2」などと並び、 このジャンルを代表する傑作として高い評価を受けながら、 なぜか日本では未公開のままだった作品。 実は製作直後の昭和48年当時、大手配給会社が買いつけながらも、 税関の検閲によって上陸を果たせなかった曰くつきの映画なのだ。 まさに闇に埋もれたお宝作品に一条の光を当てるトラッシュマウンテン ビデオ・レーベルの第1回リリースにはまたとない逸材といえよう。 更に今回はオリジナル、伊語バージョンのプリントを使用。 既に輸入版を手にしているコアなファンも必見の要注目 アイテムとなっている。 |
物語の舞台は良家の子女が集まる女学校。慎ましい学園生活の裏側で 静かに膨らむ性への好奇心は、やがて予想さえしなかった恐ろしい事態を招き、 美しい少女たちに不吉な死の気配が漂ってくる。 監督のマッシモ・ダラマーノはカメラマン出身。「毛皮のヴィーナス」で 女神ラウラ・アントネッリを発見し、「愛の妖精/アニー・ベル」で 無垢なブロンド娘アニー・ベルに性の目覚めを教えた彼が、 英国の推理作家エドガー・ウォラスの「The Clue of the New Pin」を原作に、 思春期の少女たちを襲う異常な事件をスリリングに描出。 教職に就きながら、教え子と逢い引きを重ねる主人公、 後ろめたい秘密を隠した女学生たち、そして彼女らの入浴を壁の穴から 覗き見る変態教師と、幾重にも重なる背徳的なムードで全編を貫きつつ、 凄惨な殺人場面と犯人探しのプロットを平行して展開。 血や裸と共に物語が吹っ飛んでしまう凡作ホラーにはない、 ジャッロ映画ならではの醍醐味を味あわせてくれる。 霧に煙るミステリーの本場、ロンドン周辺の空気感を見事に取り込んだ撮影は、 後に娯楽監督として名を馳せるアリスティーデ・マサチェージ(ジョー・ダマート)が担当。 犯人の視線となって徘徊する一人称カメラを含めた、スタイリッシュな撮影技法にも注目を。 また画面をリリカルに彩る音楽は、巨匠エンニオ・モリコーネの書き下ろし。 他にもイタリア映画界を長年に渡って支えて来た、生粋の職人たちがその腕を存分に競い合う。 主演はアクション映画の伊達男俳優ファビオ・テスティ。彼との禁断の恋に身を焦がす 女生徒に「悪魔の墓場」のクリスティーヌ・ガルボが扮し、全裸も厭わない衝撃シーンを 体当たりで熱演。また「発情アニマル」でセンセーショナルな悪名を轟かせた カミール・キートンが、キーロールのソランジェを演じ、再びショッキングな怪演を見せてくれる。 また、カリン・バール、ヨアヒム・フックスベルガーら、ドイツ出身のベテラン勢が脇を固めるほか、 フレッシュなイタリア系若手女優も多数出演。学園に漂うガーリーな雰囲気と、 70年代当時のファッション風俗も味わい深い。
トラマンの担当者
K氏から相談を受け、レーベルの第1弾に選んだのがコレ。 |
「ザ・シャウト |
ある昼下がり。田園風景に囲まれた精神病院で、 患者や職員によるクリケットの試合が行われようとしている。 採点係の青年は、相手チームのスコアラーをつとめる クロスリーという男から、奇妙な話を聞かされる。 前衛音楽家のアンソニーは、妻レイチェルと共に 海岸部の静かな田舎で暮らしていた。 ある日、彼は見知らぬ男から唐突に哲学的議論を ふっかけられる。男の名はクロスリー。 彼は半ば強引に音楽家夫妻の家に上がり込む。 クロスリーは、自分はアボリジニの呪術を学び、 “声”だけで人を殺すことができる、とうそぶく。 彼はアンソニーをひとけのない砂丘へと連れて行き、 耳栓をさせると、声を限りに絶叫する。 凄まじい怪音が海岸に響きわたり、 たまたま居合わせた羊飼いと羊たちは絶命。 アンソニーも気を失って砂丘を転げ落ちていった。 その後も平然と居座り続けるクロスリー。 いつしか彼になびいていく妻。 男はただそこにいるだけで、見えない力によって 事態を操っているかのようだった。 不安に苛まれるアンソニーの疑念が確信へと 変わった時、すでにレイチェルの魂は──。 |
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「ナイトチャイルド」 |
悪魔の絵画を取材することになった TVディレクターの父親(「サンゲリア」の リチャード・ジョンソン)に同行し、ロンドンから イタリアへと旅行することになった少女エミリー (「サスペリア2」「処刑男爵」などの悪魔っ子で 知られる赤毛の子役ニコレッタ・エルミ)。 愛する父親が、美しい現地製作スタッフの ジョアンナと恋仲になった事を知った彼女は、 異国の土地で底知れぬ孤独と、行き場のない 嫉妬心を募らせる。そんな時、火事で失くした 母親の形身であるメダリオンを手にした エミリーは、次第に邪悪なパワーに支配され、 奇妙な悪夢にうなされるようになる。 父親の周囲で続発する不吉な出来事、 まるで何かに取り憑れたように人格が変わり、 奇行を繰り返す娘。エミリーの面倒を見ていた 乳母のジルが謎の水死を遂げ、死の影は 親子の元にも忍び寄ってくる・・・。(yamazaki) |
200年前の謎に満ちた悪魔の絵と、父親を独占したい倒錯した少女の ややマニア向け情報になっちゃうんですが、トラマンから発売された |
「スパズモ」 |
海を臨む険しい断崖に建つ廃墟を訪れた若いカップル。 暗闇で愛し合う彼らは、木立の奥に吊るされた 無残な女の死体を発見する。恐怖におののきながら近づくと、 それは生気のない瞳をしたマネキン人形だった。 夜が明けて、海岸に出かけたハンサムな青年クリスチャンと 彼の恋人が、浜辺に倒れたブロンドの女性を見つける。 抱き起こされて意識を取り戻した彼女は、バーバラとだけ 名乗って姿を消す。女が去った砂浜には「トゥカーニャ」という 奇妙な名前を記した水筒が残されていた……。 不気味なマネキンや拳銃、血のついたハサミなどの 忌まわしい小道具、死体が投げ込まれた井戸、 鳥カゴでいっぱいの部屋、波しぶきの砕け散る海辺を見下ろす 屋敷が醸し出すミステリアスなムード。陰謀や策略によって 複雑にネジれた物語は、数々の殺人シーンを配しつつ、 衝撃的な結末へと突き進む! (yamazaki) |
『スパズモ』LOVE! お話は主人公の青年クリスチャンが体験する、まさに次から次へと やたらとりとめなく流れていって、気ばかり焦る悪夢のような数日の出来事で、 1回目観たとき、最初の1時間くらい全然意味わからなかったです。 でも、その観客おいてきぼりの滅裂状態でつき進む頭おかしい感じが、 とても風変わりで面白かったし、全編に散乱する妖しかったり謎めいてる イメージと言葉が、ヘンな魅力を湛えていてとても好き。 ストーリーがまともに転がり始めるのは、よくやく事態がぼんやり 見えてくる後半で、一見、それまでは短すぎてオチに至らない、 ほとんど記号のような断片がいたずらに集積していくだけっぽい造形。 実際、登場人物が放つそれらの曖昧なメッセージは、 ほんとに一瞬の煌きのようなもので、観客が記憶できてまともに伏線として 機能するにはほど遠い短さと無説明さなんだけど、でも逆に、 その謎めいたショットの尋常じゃない羅列が、独自の混沌とした 雰囲気を生み出していて、なにかいつも殺人の気配と痕跡だけを 辿っていくしかない迷路に引き込まれるような魅力があります。 それに2回目見返したら、意味不明だった端々のセリフが、 すべてちゃんと伏線になってたし、登場人物の不条理な行動も、 実は理屈がすべて通ってて感心しました。 TRASH MOUNTAIN VIDEOの中では、同じくウンベルト・レンツィ監督の 『声なき殺人者』も、地味ながらも痛ましさがあって感動したのだけれど、 コレも同じく、謎は主人公が映画に撮られなかった時間にあるという 構成なのですね。その匂わせながらも核心は周到に見せない作りと、 不意をつくような暴露の仕方が、うまいしとても衝撃的でイイなーと思いました。 あと、全編に渡って、人気のない廃墟の陰や公園の木立に、 首を吊るされ腹にナイフを刺された無惨な姿で現れる、 生々しくも美貌のマネキンたちのイメージがステキです。 後半のクライマックス、混乱する主人公の悪夢と並行して、 また別の誰かがむごい悪夢の沼に堕ちているような場面があるのですが、 主人公のクリスチャンが車を拾おうとする道路脇で、娼婦たちが 立ち話をしてる背後、木陰で衝動に突き動かされてザクザクと何かに ナイフを突き立てる男の腕だけが覗く、その混沌とした一連の状況が、 忌まわしくも哀れなマネキンの姿ともつれて、後々やりきれないラストに 到っていきます。 この衝撃的な幕切れには泣かされたよ…。こういう映画でグッと来るのは 頭がおかしい気がするものの、わたしは『声なき殺人者』でもいたわしく はりつめた狂気に涙が出そうで、本作も同じような思いがけず胸を突かれる、 なんだか酷く切迫したやるせなさがあって、わけがわからない映画なんだけど、 気がついたら大変悲痛な感銘をおぼえてました。 (真魚 八重子/八重子の黒い部屋*ウットリ鑑賞メモ より) 八重子さんのサイト:アヌトパンナ・アニルッダ 1974年・イタリア/カラー・90分/英語:DD(モノラル)/シネマスコープ(2.35:1) 販売開始日:2003/8/29 定価:5,040円 (税込) |
「デビルナイト」 |
孤児院の子供たちを乗せたバスが、 ロンドン郊外で衝突事故を起こした。 運転手の体が突如炎に包まれ、焼死したのだ。 運転席近くにいた少女メリーはその一部始終を 目の当たりにし、ショックで入院。 彼女が何らかのトラウマを抱えていることに 気付いた医師は、心理療法を施そうとする。 そんな折、殺人罪で服役していたメリーの 母親が出所し、強引に娘を取り返そうと画策していた。 一方、孤児院の管財人たちが相次いで怪死。 捜査に乗り出したスコットランド・ヤードの ビンガム大佐は、病理学者のマークに協力を仰ぐ。 二人はメリーの存在が事件に関与していると睨むが、 その真相は想像を遥かに絶するものだった……。 |
一人の少女をめぐる奇妙な事件を主軸に据え、オカルトと現代医学を絡めた 推理劇が展開する異色の恐怖映画。イギリス映画らしいムーディな映像、 アンチモラルなストーリー展開、そして個性溢れるキャラクター造形が 魅力的なブリティッシュ・ホラーの逸品である。 クリストファー・リー、ピーター・カッシングというゴシック怪奇映画の 代名詞といえる二大名優が、モダンホラーの探偵役を演じているのも面白い。 原作は「早すぎた奇才」といわれるイギリスの怪奇小説家、 ジョン・ブラックバーンの長編「Nothing but the night」(68年発表)。 ツイストの利いたプロットは翌年作られたカルトムービーの最高峰 『ウィッカーマン』(73)を想起させるが、本作も狂いっぷりでは まったく引けをとらない。特にラスト、幼い子供たちがレミングのごとく ××××する、あまりにも常識破りでショッキングなイメージは忘れがたい。 ストーリーの面白さもさることながら、俳優陣も実にゴージャス。 ビリングのトップを飾っているのはリー&カッシングというビッグネームだが、 この映画の主役は何といってもメリーを演じたグウィネス・ストロングだろう。 子役時代のアンナ・パキンを凛々しく知性的にしたような顔立ちと、 いかにも私立校の制服が似合うすらりとしたスタイルを持つ英国製美少女。 幸薄そうな雰囲気を微妙に醸し、「こんな可愛い子が、まさか……」と 思わせる表情が実に巧い(それこそ思うツボである)。 美少女映画の裏ベストとしても本作は外せないだろう。 ベテラン怪奇役者二人を向こうに回して場面をさらっていく彼女の姿は、 おそろしく格好良い。 トラッシュ・ファン的に注目なのは、メリーの母親を演じるダイアナ・ドース。 『金髪の悪魔』(57)などの作品で「英国のマリリン・モンロー」と うたわれたブロンド美女だが、『早春』(70)の頃には ディヴァインのごとく太ったケバイ中年女と化し、純情なファンの心を どん底に叩き落した。そんな彼女が本作では新たな持ち味(?)を 最大限に活かし、因業なおばさんをパワフルに怪演。 その変わり果てた姿をも受け入れてこそ、真のファンだとは言えまいか? まあ冗談キツイって感じだが、『デビルナイト』における彼女の フリーキーな存在感は冗談抜きで素晴らしい。 病理学者マークを演じるP・カッシングは、いつものインテリジェントな 演技で物語の狂言回し役をつとめる。C・リーは、彼と共に事件の謎を追う ビンガム大佐役。『ウィッカーマン』で演じた領主とは反対に、 集団リンチされるわ焼き殺されそうになるわ、とにかく散々な目に 遭いまくるのがおかしい(そのフラストレーションが『ウィッカーマン』の 哀れなハウイー巡査長に向けられた?)。 そんな文字通りの熱演も辞さないリー卿の入れ込みようも当然で、 本作を製作したシャルルマーニュ・プロとは、彼が英国ホラーの新たな 可能性を見出すべく立ち上げたプロダクション。俳優や監督、製作者に ハマーゆかりの人材が勢揃いしているのはそういうわけである。 監督のピーター・サスディは『ドラキュラ血の味』(69)でデビューし、 『ハンズ・オブ・ザ・リッパー』(71)などを手がけた才人。 てきぱきとした職人的な演出の中に、時おり度を越した描写をぶち込んで 観客を唖然とさせる。製作のアンソニー・ネルソン・キーズも 50年代からハマー・プロで活躍してきたベテランだ。 同社で作られたのは『デビルナイト』1本きりだが、同時期にリーは 『ウィッカーマン』の制作協力にも名乗りを上げている。 だからこの二本は制作時期や題材のみならず、成立過程においても 兄弟分のような作品なのだ。 時代の推移と共に作風も過激になっていったハマーでさえ、 末期に至ってもある程度の上品さ(悪く言えば古臭さ)はキープしていた。 しかしひとたびそこを離れてしまうと、こんな楽しい怪作を突然 生み出してしまうのが面白い。ピート・ウォーカー監督の諸作を筆頭に、 非ハマー/アミカス系英国ホラー映画の闇は濃くて深い。 『デビルナイト』はそのふたつの異なる潮流が、ある時代において 溶け合った希有な成功例といえるかもしれない。(岡本敦史) 1972年・イギリス/カラー・87分/英語:DD(モノラル)/ビスタサイズ(16:9) 販売開始日:2004/1/30 定価:5,040円 (税込) |
「火事だよ! |
とある小さな田舎町。高齢のため引退する消防署長(実は末期ガン)の 今後を祝して、消防署主催のダンスパーティーが催される。 最大のイベントは、会場の中からミス消防士を選ぶ美人コンテストと、 各種景品が当たる抽選会。しかし開場前からケーキが誰かに盗まれたり、 ボヤ騒ぎが起こったりと、前途多難な予感。ともあれパーティーの幕は開き、 ホールは町の住民たちでごった返す。 ところがコンテスト出場者の美女はなかなか集まらず、景品は依然として 何処かへ消え続ける。今夜の主役であるはずの消防署長は放ったらかしのまま。 テーブルの下では若者がペッティングをおっぱじめる始末……。 別室のコンテスト審査会場では、ようやくかき集めてきた女の子たちを前に、 何も審査基準を決めていなかった署員たちが途方に暮れていた。 が、一人のやる気マンマンな娘がいきなりビキニ姿を披露したのをきっかけに、 彼らは次第にスケベ心を剥き出しにしていく。 部屋の中をグルグル行進する女の子たちに投げキッスさせ、 やんやの歓声をあげる制服姿の公務員たち。 なんとかステージ審査までこぎ着けたものの、些細な手違いから 候補者が次々と脱走!混乱に次ぐ混乱は雪だるま式に膨れ上がっていく。 カオス渦巻く宴の果てに待ち受けるものとは?ミス消防士の栄冠は誰の頭上に? そんな時、一軒の民家から火の手があがった……。 |
『カッコーの巣の上で』(75)『アマデウス』(84)の名匠ミロス・フォアマン監督が、 チェコ=スロヴァキア時代に放った傑作コメディ。72分というタイトな尺の中に、 スラップスティックな笑いとシャープな社会風刺をめいっぱい詰め込んだ、 抱腹絶倒の一作だ。当時の社会主義政府からは「共産党を批判した 反国家的作品である」という烙印を押され、フォアマンがアメリカへ亡命する きっかけとなったいわくつきの作品でもある。 とはいえ中身はいたって軽妙、そしてアナーキーかつクレイジー。 イイ年したおじさんたちが、真面目な顔でどんどん間抜けな状況へと 突き進んでいくさまは、ひたすらおかしく時折ゾッとさせられる。 ドタバタ劇を狂気の域まで深く切り込むフォアマンの容赦のなさがあるからこそ、 この作品は面白い。「こりゃ怒られても仕方ないや」と誰もが思える、 最高に切れ味鋭い傑作である。 味わい深すぎる消防署員たちの顔ぶれは勿論のこと、 地元感覚濃厚な女の子たちの演技を超えた存在感も魅力的。 よく東欧のファンタジー映画には陶磁器のように美しいヒロインが登場するが、 初期フォアマンの作品に限ってそれはない。 平凡な田舎町を舞台にした彼の作品に出てくるヒロインはいつでも ちょっと冴えない、だけどチャーミングな魅力に溢れた「その辺にいる娘」だ。 ミス消防士コンテストが目玉のひとつである本作でも、 フォアマンの絶妙な審美眼が最大限に発揮されている。 審査会場にずらり揃った彼女たちの、素晴らしく微妙な顔立ちと ナチュラルな肉づきはちょっと壮観。そういえば『アマデウス』のヒロイン役にも 土壇場で『ファンハウス/惨劇の館』(81)しか代表作がない エリザベス・ベリッジを起用したりして、その趣味性は一貫しているのだった。 鮮やかな手際で狂った状況を醸成する、若きフォアマンの迸る才気。 それが政府の弾圧対象になったのは、官僚の無理解ではなく最上の理解が生んだ、 言ってみれば当然の結果だ。これほどまでに面白おかしく、 見事な社会風刺を見せつけられたからこそ、体制側は危惧を覚えたに違いない。 時の為政者にとって「笑い」は最も恐るべき叛逆のツールになり得る。 後にフォアマン自身がこの顛末を「性表現」に置き換え、 自由の国アメリカを舞台に『ラリー・フリント』(96)で描きのめしたのは記憶に新しい。 本作がやっと公開にこぎ着けた後、次回作の契約交渉のためパリを訪れていた フォアマンは、祖国の自由民主化運動が軍事介入によって叩き潰されたことを知る。 そして『火事だよ!カワイ子ちゃん』の反体制的創作姿勢を理由に、 自分がスタジオから解雇されたことも。フォアマンは祖国に見切りを付け、 フランスからそのままアメリカに亡命。チェコでは彼の全監督作品が 半永久的に上映禁止となった。米国移住後のフォアマンが「自由への渇望」や 「反体制」をテーマにした作品を撮り続けることになるのも、無理からぬ話である。 チェコ・ヌーヴェルヴァーグ時代の末尾を飾る象徴的作品となった 『火事だよ!カワイ子ちゃん』は、本国での冷遇に反して諸外国では高く評価され、 アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。現在もカルトな名作として 世界的に認知されているが、日本では劇場公開はおろかソフト化もされず、 幻の作品となっていた。トラマンからの国内初DVDリリースは、 映画ファンなら快哉をあげるべき事件である。(岡本敦史) 1967年・チェコ=スロヴァキア/カラー・72分/チェコ語:DD(モノラル)/スタンダード(1.33:1) 販売開始日:2004/4/30 定価:5,040円 (税込) |
「ブロンドの恋」 |
製靴工場が中心産業の田舎町で、駐屯軍の歓迎ダンス パーティーが開かれる。町の経済を支えている女工たちと 兵士たちをくっつけて、都会への人口流出を食い止めようという 町内会の腹づもりだ。むさ苦しい兵士たちと寮住まいの 女工たちがにらみ合う、微妙な空気のパーティー会場。 恋に恋する少女アンドゥラは、中年兵士の鬱陶しい アプローチには目もくれず、ステージでピアノを弾く 青年ミールダのことが気になる。ミールダの方も アンドゥラの態度に気付き、会場の外で積極的に 彼女を口説く。二人はあれよあれよとベッドイン。 ある日、地元の男友達トンダからの強引な求愛を突っぱねた アンドゥラは、勢いで町を飛び出してしまう。 プラハにいるミールダを訪ねるためだ。私にはもう彼しかいない。 ところがその頃ミールダは演奏がハネた後、またしても 別の女の子を口説いている最中だった。そんなこととは 露知らず、彼の実家におしかけたアンドゥラを待っていたのは……。 |
田舎町に住む平凡な娘のドッチラケな恋模様を、ちょっぴりシニカルに見つめた 青春コメディー。なんともほろ苦い滑稽さが魅力的な佳作である。 監督は『黒いペトル』で長編デビューし、本作が2作目となる チェコ新世代監督の一人、ミロス・フォアマン。 開巻早々、やる気なさげな女の子がギターを弾いて「イエーイエー」と歌う オープニングから、すっとぼけたモダンな演出が光る。 この作品と3作目の『火事だよ!カワイ子ちゃん』が連続して アカデミー外国語映画賞にノミネートされるという快挙を成し遂げ、 東欧映画界の期待の星として注目を集めた。 その後の活躍は言うまでもないだろう。政府の圧力から逃れるために米国に渡り、 『ヘアー』(79)『アマデウス』(84)といった大作・話題作を手がけ、 社会派の名匠としての地位を確立。多くの映画人からの惜しみない敬愛を 集め続けている。彼がチェコ時代に手がけた作品群は、カルトムービーとして 世界の映画ファンに評価されてきたが、日本でこれまで見る機会は ほとんどなかった。ようやくのDVD化は嬉しい限りである。 『ブロンドの恋』では、フォアマンの瑞々しく軽妙な作家性を楽しむことができる。 市井の生活感が匂うリアリズムを基調にしながら、時にサイレント喜劇のような 手法で笑わせ、時に詩的な映像美で魅せる。特に印象深いのはベッドシーン。 準備万端さあ始めようかという時、窓のカーテンロールが壊れて落ちる。 それを青年が拾ってクルクルと巻き上げると、だんだんと彼の股間が露わに…… それをじっと見てしまう女の子の目線。エロティックなユーモアと詩的な空気が 相まった、秀逸なアイディアの名場面だ。この辺りの見事な演出には本当に はっとさせられる。これが才能というものだろう。 フォアマンは主人公の心情にべったり寄り添わず、逆に突き放すように、 ありふれたラブストーリーの滑稽な顛末を映し出す。有り体に言ってしまえば 「悲しいお話」なのだが、決して重苦しい映画になっていないのは、 フォアマンの喜劇的才能に因るところが大きい。ただのリアリストにはない、 作り手のちょっぴり意地悪なユーモアが映画を豊かにしている。 アキ・カウリスマキ監督の『マッチ工場の少女』(90)に与えた影響に ついても考えてみたいところだ。 本作と続く『火事だよ!カワイ子ちゃん』で共同脚本・助監督をつとめた イヴァン・パセル(アイヴァン・パッサー)は、フォアマンと前後して渡米。 ニューシネマの佳作『生き残るヤツ』(71)や、米国ではカルトムービーとなった 『男の傷』(81)などを監督している。 また、撮影のミロスラフ・オンドリチェクも本作と 『火事だよカワイ子ちゃん』の後、活躍の舞台を国外に広げ、 名カメラマンとして精力的に活動。リンゼイ・アンダーソン監督や ジョージ・ロイ・ヒル監督に好んで起用され、最近ではドリュー・バリモア主演の 『サンキュー、ボーイズ』(01)の撮影を担当(これも男運の悪いヒロインを リアルなカメラワークで追いかけた佳作だった)。『パパ/ずれてるゥ!』(71)以降、 米国移住後のフォアマン監督作品の大半も手がけている。(岡本敦史) 1965年・チェコ=スロヴァキア/モノクロ・88分/チェコ語:DD(モノラル)/ビスタサイズ 販売開始日:2004/4/30 定価:5,040円 (税込) |
「高速ヴァンパイア」 |
救急病院に勤める冴えない医師マレックと女性運転手ミマ。 ある日、いつものように救急車で市内を爆走していた二人は、 偶然レーシング・カーの事故現場に遭遇する。 女性レーサーの死体を乗せたまま横転していたのは、 フェラット社の新型車「RSR」。レーサー志望だったミマは、 その車が放つ魔性に魅入られる。彼女はそこでかつてのコーチと 再会し、フェラット社の下で再びレーサーとして訓練を開始した。 マレックは嫉妬心からミマの周囲をかぎまわるが、 謎の男ドクター・カプランが現れ、およそ信じ難い言葉を告げる。 ミマが心奪われたRSRとは、アクセルから人間の血を吸い取って 動力源とする“吸血カー”だというのだ! 死んだ女性レーサーの妹を名乗る美女の出現や、血みどろの幻影に 悩まされながら、フェラット社の陰謀へと迫っていくマレック。 果たして彼は、ミマの魂を救えるのだろうか? |
『ウィークエンド』(67)、『キラーカーズ/パリを食べた車』(74)、 そして『クラッシュ』(96)……自動車をモチーフにした問題作は数あれど、 最も面妖な作品といえば本作にとどめを刺す。 まず驚かされるのは異常にスピーディーな演出。タイトルに「高速」と付くだけあって 本当に速い。冒頭15分のたたみかける展開は圧巻だ。 のどかな田園風景の真ん中で起きる交通事故。後続車がドカドカ飛び込み、 あっという間に報道陣が駆けつけ、画面内のテンションが無意味に急騰する。 さながらピットインのごとき無秩序状態が劇中の至るところで発生し、 訳の分からない迫力に溢れかえっている。 吸血カーやフェラット社の描写など、無駄にかっこいいプロダクション・デザインも 見どころ(フェラットとはもちろん「ノスフェラトゥ」のもじり)。 痛々しいスプラッター・シーンや見事な特殊効果も搭載。 生物のように息づき、鮮血が噴き出す吸血カーの“傷口”に主人公が手を突っ込む ビジュアルは、まるでクローネンバーグ作品のようにエロティックでグロテスクだ。 ちなみに本作が制作されたのは『ヴィデオドローム』(82)と同年。 海を越えて発生した異才同士のシンクロニシティ? 監督はスロヴァキア生まれのベテラン、ユライ・ヘルツ。 『モルギアナ』(72)や『ナインス・ハート』(78)といったゴシック怪奇映画で名を馳せる 一方、フランスでTVシリーズ『メグレ警視』のエピソード演出を手がけるなど、 ジャンルの別なく国際的に活躍する職人監督である。が、職人といっても タイトな娯楽作品を撮り続け、観客からもプロデューサーからも一定の信頼を得るような 人物ではない。ユライ・ヘルツの手にかかれば、どんなジャンルであろうとほぼ例外なく 奇妙な色合いを帯び、形容し難い不気味さと不謹慎なコミカルさを湛えてしまう。 そのくせ映像は常に品の良さを失わず、過不足がない。 スロヴァキアの“職人”は一味違うのだ。 本作は、そんな不可解な作家性を持つヘルツ監督が、内なる暗黒のマグマを 思わずハイウェイにぶちまけてしまった怪作である。 ホラーなのかコメディなのか、それとも社会派サスペンスなのか不条理劇なのか? 映画は万華鏡のごとく表情を変え、とらえどころがまるでない。 次から次に謎めいた登場人物たちが登場し、大真面目な顔でバカバカしい物語を さらにややこしくかき回す。切ない余韻を残すラストには、 思わず条理を超えた感動を覚えるほどだ。 元々はさらに過激な描写を盛り込んだ内容だったが、脚本審査と編集で 執拗な検閲に遭ったため、ヘルツ本人は完成した作品を気に入っていないらしい。 当時、彼は『ナインス・ハート』のホラー趣味が非難されたり、雇われ仕事の 国外長期ロケを無許可のまま強行したり、本人曰く「人生最悪の時」にさしかかっていた。 そんな頃、ようやく自分の好きな題材で、美男も美女も使わずに低予算で撮り上げたのが この『高速ヴァンパイア』なのである。その煮えたぎる反抗心というか、 ヤケクソな態度が作品のテイストに如実に反映していると考えるのは穿ちすぎだろうか。 だが、この映画に横溢する「のびのびと無茶やってる感じ」は、紛れもなく本物である。 盛り上がるだけ盛り上がった映像や物語には、何の意味もない。 その空虚さはそんじょそこらのMTV出身監督を軽く凌駕する。 やたらかっこいいタイトルバックの奇妙な絵画、やけに本格的な劇中の サイレント吸血鬼映画、そして繰り返し登場する同じ顔の群集が示唆するのは、 この作品が「空っぽ」だという事実に他ならない。なんてクール! ビン底メガネのダメ男マレックを演じるのは、『つながれたヒバリ』(69)や 『スイート・スイート・ビレッジ』(85)などの監督として知られるイジー・メンツェル。 ヘルツ監督とは国立芸術学院の人形劇専攻クラスで同窓生だった。 丸顔で耳のとがった容貌は、まるで下級悪魔のようである。(岡本敦史) 1982年・チェコ=スロヴァキア/カラー・94分/チェコ語:DD(モノラル)/スタンダード 販売開始日:2004/4/30 定価:5,040円 (税込) |
「影なき淫獣」 |
ある夜、ミラノの学生街で起きた異常な事件。 カーセックスを愉しんでいた大学生カップルが惨殺されたのだ。 被害者の女学生は鋭利なナイフで乳房をえぐられていた。 警察は偏執狂の仕業だとして捜査に乗り出すが、 時置かずして第二の事件が発生。マリファナパーティーから 抜けだして森を彷徨っていた女子大生が、 目を潰され、切り刻まれた死体となって発見されたのである。 誰もが羨む美貌をもつ女学生ダニーは、 殺された生徒たちと同じクラスを受講していた。 彼女は級友のアメリカ人留学生のジェーンに、 「犯人は自分の身近にいる人物なのでは?」と相談する。 恐怖に苛まれるダニーは、人里離れた田舎の別荘へ逃れて 友人たちと休暇を過ごそうと計画する。 美しい風景の中、不安から解放された彼女たちは バカンスを満喫する。女友達とレズビアンセックスに興じ、 裸で日光浴を楽しむ優雅なひととき。 そんな奔放な姿を、殺人者がじっと見つめているとも知らず──。 ふとした事故で足を挫き、一人ベッドで休んでいたジェーンが 翌朝目にしたものは、まるで地獄のような光景であった。 ナイフで突かれ、切り裂かれ、血の中で果てた女たち。 恐慌をきたす彼女の耳に、殺人者の足音が響く……。 |
誰の記憶にも残る映画。そして二度と観られない映画。 『影なき淫獣』は、そんな映画の代表格だった。 その俗悪なフィルムが観客に与えたトラウマは、 決して癒えることなく、永遠に色褪せぬ悪夢の源泉となった。 美しい女の柔肌を、肉を、そして骨を切っていくノコギリ。 血だまりに浮かぶ、四肢のない体。 切り離された頭部が、やさしい瞳で部屋の片隅を見ている。 血肉の朱も鮮やかな切断面の妄想は、果てることなく膨らみ続け、 そして伝説と化した。 日本公開から27年という歳月を経て果たされた待望のDVD化によって、 美化された記憶は幻滅と共に崩れ去ったか? 未だ見ぬ名画の幻影に劣情をもよおし、眠れぬ夜を悶えぬいた人々は 己の行き過ぎたファンタジーに頬を赤らめたか? とんでもない。 僕たちは『影なき淫獣』が70年代ジャッロを代表する傑作だったことを 改めて発見したのだ。 トラウマ必至の残酷描写を孕んだエロティック・スリラーとして、 暴力的で淫靡な邦題と共にホラー愛好家の間では伝説化していた本作。 実際に観てみると、サスペンス映画としてのタイトで好バランスな仕上がりに まず驚かされる。最大の見せ場である解体シーンにしても、 直接的なスプラッター描写は驚くほど少ない。 だがその場面で観る者が抱く感覚は、紛れもなく、夢にまで見たあの濃密な恐怖だ。 派手な血しぶきを見せることが、この映画の眼目ではなかった。 “息を殺して身を隠すヒロインのすぐそばで、殺人鬼が黙々と 友人の死体をノコギリで切り刻んでいる”という異常な状況の緊張感が、 強烈にトラウマティックな体験として灼きついたのだ。 『影なき淫獣』は、そういった意味ではこちらの下品な期待をさらりとかわしつつ、 ウェルメイドな猟奇ミステリー映画として楽しめる一級の娯楽作である。が、 全編に漂う不気味で倒錯的なムードの濃厚さは、数多の同趣向作を遥かに凌駕する。 監督・原案・共同脚本をつとめたセルジオ・マルティーノによる特徴的演出── ワイドレンズを効果的に用いた、歪んだ興奮を誘うブルータルな映像は 本作で壮絶な輝きを見せる。 湿地帯に生えた森の中で女生徒が惨殺されるシーンは、特に強烈だ。 生理的な恐怖感を煽る、毒気に満ちたS・マルティーノのサスペンス演出は、 ジャッロという特異なジャンルを代表するテイストと言えよう。 主演は『歓びの毒牙』(69)『スパズモ』(74)のスージー・ケンドール。 ネグリジェ1枚という心許ない姿で、死の恐怖と対峙するヒロインを熱演している。 美しい女学生ダニーを演じるのは、『青い体験』(73)のティナ・オーモン。 気の強そうな美貌に、被虐的な役柄がよく似合っている。 彼女らの美しさと、恐怖に歪む表情の素晴らしさが、 一層この映画を忘れがたいものにしている。 自由奔放なセックスに耽る若者たちを狙った連続殺人という題材や、 犯人当ての要素もあり、スラッシャー・ムービーの元祖とも言われる本作。 熱心なファンには“TORSO”のタイトルでもお馴染みだろう。 元々はイタリア語で「幹」を意味する単語で、頭と手足のない裸身の 彫像・マネキン、あるいは人間の胴体そのものをさす。 大好きなあの子を枕にしてみたら、きっとそんな感じ? ゴロゴロ転がっちゃったりして、なんか可愛いよね。 単刀直入にして猟奇味満点の、秀逸なタイトルである。 (『ボクシング・ヘレナ』ではちょっと弱い) 日本版DVDに収められているのは、 “CARNAL VIOLENCE”と題されたイタリア語音声の国際版。 日米で公開された“TORSO”版とはオープニング・タイトルが異なり、 タイトル直後の大学の講義シーンが省略されている。 しかしそれ以外は、ほぼアンカット・アンセンサードの完全版だ。 プリントの状態も終始良好。すこぶる美麗。 それでも「公開当時のかっこいいオープニングが観たいよう!」という コアなファンのために、DVDには“TORSO”版のオープニングもしっかり 映像特典に入っている。さらに予告編2タイプ、ポスター&スチル・ギャラリー、 サウンドトラックまで収録されているという豪華盤。 トラマン・レーベルを代表する、気合いの入った一枚だ。必携。(岡本敦史) 1973年・イタリア/カラー・89分/イタリア語:DD(モノラル)/ビスタサイズ(16:9) 販売開始日:2003/8/29 定価:5,040円 (税込) |
「ナインス・ハート」 |
昔々、ヨーロッパのとある国。 町民たちの間で、大公家にまつわる奇妙な噂が立っていた。 美しい姫君への求婚者が、すでに8人も姿を消したというのだ。 ドサ回りの人形劇団は、魔法にかけられた姫の物語を上演して 人気を博す一方、近衛兵たちに目をつけられていた。 放浪中の青年マルティンは劇団員たちと仲良くなり、 人形遣いの娘トンチカと瞬く間に恋に落ちる。 ある時、近衛兵と劇団員の間に乱闘騒ぎが起こる。 ごたごたの末、マルティンは身代わりとなって 大公家の事件解決を志願する。それは命を賭した 危険な役目であり、すなわち姫の求婚者になるということだった。 マルティンは屋敷に赴き、姫君を慕う道化にことのあらましを聞く。 彼女は、宮廷付の占い師だった伯爵の求愛を断ったため 魔法をかけられてしまい、それからというもの 夜な夜な城を抜け出しては何処かへと消え去るのだという。 その夜、マルティンと道化が王女の後をつけると、 辿り着いた先は怪しげな古城。 待ち構えていた伯爵は、道化を捕らえると そのハートを抜き取ってしまう。伯爵は王女を利用して 9つのハートを集め、不老不死の秘薬を作ろうとしていたのだ。 果たしてマルティンは、王女にかけられた 魔法を解くことができるのだろうか? そして無事、トンチカの元へ戻れるのだろうか? |
魔法の虜となった美しい姫。古城に巣くう妖術使いの伯爵。 放浪の青年と人形遣いの娘が紡ぐ恋。そして奇妙な機械に入れられた9つの心臓――。 『ナインス・ハート』は、東欧ファンタジーらしいダークな雰囲気を漂わせながら、 メルヘンチックな意匠とユーモアを随所に施した、美しくも軽妙な幻想怪奇譚である。 ロウソクの光を用いた照明効果が美しい宮廷舞踏会の場面や、 特殊撮影で処理された回想シーンなど、あまり例を見ない幻想的な映像美が見もの。 古城を舞台に展開する後半も、ゴシックムード満点だ。 被ると誰にも見えなくなる「透明マント」、ファラオの墓から盗んだ「不老の薬」、 1秒いただけで地上では1日が経ってしまう「時の部屋」など、 ファンタジー的趣向に富んだ舞台装置が次々と登場するのも楽しい。 監督はチェコ=スロヴァキアの誇る職人監督、ユライ・ヘルツ。 『モルギアナ』(72)や『高速ヴァンパイア』(82)など、ビザールな作風の作品群で 知られる一方、幅広いジャンルにわたって多くの作品を手がけている。 本作では、濃密なゴシックテイストの中にユーモラスな描写をちりばめ、 時にスラップスティックなアクションも織り込みながら、 落ち着いたスタンスで物語をまとめている。 また美術協力として、かの鬼才ヤン・シュヴァンクマイエルが参加。 巨大な時計の振り子が揺れ、背の高いロウソクが立ち並ぶ「時の部屋」や、 実験室の奇怪な装置など、強烈なヴィジュアルでいっぱいだ。 シュヴァンクマイエルとヘルツ監督は学生時代・軍役時代からの友人で、 お互いの映画制作に協力し合ってきた仲。ヘルツ監督自身も映画制作の道に進む前は、 国立芸術学院で人形劇制作部に在籍していた。本作の冒頭を飾る切り絵アニメや、 人形劇団の設定などには、そんな監督のパーソナリティが反映されているのだろう。 この映画の制作当時、ヘルツ監督がこだわっていたテーマは 「現代では子供向けに脚色されてしまっているおとぎ話を、ホラー映画の手法を用いて 本来の恐怖譚としての側面を蘇らせて描きたい」というものだった。 かつて日本でも「本当は恐ろしいグリム童話」などという本がベストセラーになったり、 『スノーホワイト』(97)なんていう映画も作られたりしたが、 ユライ・ヘルツは今から四半世紀も前に同じことを実践していたのだ。 監督はまず「美女と野獣」を下敷きに『鳥獣の館』(78)の制作に取りかかったが、 制作予算の都合で同時にもう1本、平行して作品を撮らなければならなくなった。 それが『ナインス・ハート』である。その撮影スケジュールは 昼間に『鳥獣の館』の現場をこなし、夜には本作を撮影するという 相当にハードなものであったらしい。 ちなみに『鳥獣の館』は、かつて日本でもビデオが発売されていた。 やはりムーディで美しいファンタジー・ホラーの逸品なので、こちらもお薦め。 完成した『ナインス・ハート』は、『鳥獣の館』に比べると肩の力が抜けた コミカルなものに仕上がったが、ファンタジーにしては残酷な描写を含んでいたため、 制作会社や政府からの反応はあまり芳しくなかったそうだ。 しかし、その「大人向きのテイスト」こそが監督の意図したものであり、 本作最大の魅力なのである。 お姫様の救出劇が人を食ったオチを迎える一方、平民たちにつつましやかな幸福が訪れる 結末は、温かくもどこか切ない、夢心地のような後味を与えてくれる。 おとぎ話とはこういうものだ……本作が宮崎駿作品に与えた影響を噂されるのも頷ける。 (岡本敦史) 1977年・チェコ=スロヴァキア/カラー・89分/チェコ語:DD(モノラル)/スタンダード(4:3) 販売開始日:2003/2/27 定価:5,040円 (税込) |
「小さな目撃者」 |
地中海に浮かぶ風光明媚な島。 灯台で暮らすジギー少年は、想像力豊かな男の子。 いつも空想遊びにふけっては、周りの人に 突拍子もない嘘をふりまくのが楽しくて仕方がない。 姉のピッパや、退役軍人で今は灯台守をしている祖父も、 彼の狼少年ぶりにはほとほと手を焼いていた。 その日、島に某国大統領が外遊にやってきた。 ジギーは姉と一緒に歓迎パレードを見物に行く。 群衆の間をすり抜け、建物に忍び込んだジギーは、 一人の警官が窓際でライフルを構えている姿を目撃する。 次の瞬間、大統領は凶弾に倒れ、町はパニック状態に。 暗殺者に存在を気付かれたジギーは、力の限り逃走する。 ピッパは旅の青年トムの助けを借り、ジギーを探す。 その頃、彼はバイクに乗った警官たちに追われ、 迷路のような町を逃げ回っていた。 なんとか追っ手をふりきったジギーは、 運良くピッパたちに出くわし、灯台へと戻る。 ジギーは家族に自分の見た事実を告げるが、 誰も彼の言葉を信じようとしない。 そして夜になり、町には外出禁止令が敷かれる。 だが、暗殺犯たちはまだ追跡の手を緩めてはいなかった。 警官たちが灯台にやってきたのを知ったジギーは、 こっそり部屋を抜け出し、誰もいない町へ身を隠すが……。 |
『小さな恋のメロディ』(71)で一世を風靡した子役スター、マーク・レスター主演作。 監督は『ヘルハウス』(73)の俊英、ジョン・ハフ。 小粒ながら見応えあるサスペンスの佳作として、映画ファンの間でも名高い。 テレビ放映で観て覚えているという人も多いだろう。 主人公ジギーを演じるマーク・レスターは当時12歳。 元気いっぱいの初々しい姿が堪能できる本作は、ファンにとっては宝物。 恐怖に顔を歪めて泣きじゃくる姿や、叔母さんが整えてくれた髪形を 自分でくしゃくしゃにするしぐさなど、随所にポイントの高い場面が満載。 マーク少年の脇を固める俳優陣も、映画ファンには嬉しい顔ぶれ。 やんちゃな弟に手を焼く年頃の姉ピッパを演じるのは、スーザン・ジョージ。 サム・ペキンパー監督の『わらの犬』(71) や、本作と同じジョン・ハフ監督の 『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(74)などに主演し、 被虐的な役柄が似合うカルト女優として、今も根強い人気を誇っている。 ジギーの祖父を軽妙に演じるライオネル・ジェフリーズは、監督もこなす英国の名優。 冷酷な実行犯を怪演するのは『未来世紀ブラジル』(84)のピーター・ボーン。 凶悪面の警官隊長、ジェレミー・ケンプもインパクト大。 監督のジョン・ハフはこれが初長編。広角レンズと極端なアップを多用し、 手前に人や物を大きく入れ込んだアクの強い構図が特徴的だ。 特に本作のような弱者を主人公にしたサスペンス映画では、強迫的な緊張感を出すのに 効果を上げている(代表作『ヘルハウス』でも多用されている)。 また、ロケーションをうまく活かしたシャープな活劇演出も見どころ。 プロデューサーは後に『ポリス・アカデミー』シリーズ(84〜)でヒットを飛ばす ポール・マスランスキー。マーク・ヘブデンの原作を基にした脚本を手がけたのは、 『戦場のピアニスト』(02)のロナルド・ハーウッド。 孤立無援の主人公が逃げ惑う話を書かせると、やはり昔から巧かった? 映画の後半、事件と関係ない人々が老若男女を問わずバンバン殺されていく展開は、 ぬるいハリウッド映画にはないハードさ。子供映画だと思って甘く見てはいけない。 いかにも70年代タッチの激しいカーアクションも、女子供相手とは思えない 凄まじさなので、ちょっと驚く。といっても、 どぎつい箇所ばかりが目立つ作品では決してなく、今観ても 優れた娯楽作として充分に観賞に堪える作品だ。 スタイリッシュなオープニング・タイトル、小洒落たエピローグも嬉しい、 「本気の怖さ」を備えたジュヴナイル・サスペンスの佳品である。(岡本敦史) 1970年・イギリス/カラー・91分/英語:DD(モノラル)/ヴィスタサイズ 販売開始日:2004/8/29 定価:5,040円 (税込) |
「ヴァンピロス・
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薄闇に包まれた舞台の上でストリップショーが始まる。 どこか少女の面影を残した肉体を持つその美女は、 一枚また一枚とランジェリーを脱いでは 硬直した生身のマネキンに着せていく。 妖しく奇妙なパフォーマンスを締めくくる、吸血の儀式。 恋人と一緒にショーを見ていたリンダは、 その女の艶やかな肢体、物憂げな表情に魅了される。 それは確かに、ここ数日リンダの夢の中に現れては、 彼女を黄泉へと誘う“夜の女王”の姿であった。 数日後、リンダは仕事で孤島に住む伯爵夫人を訪ねる。 そこで出会ったのは、まさしくあの舞台にいた美女その人。 「私の名は、ナディーン」 その瞬間から二人は急速に心を通わせ、互いの体を求め合う。 そして、ナディーンはリンダの血と魂を奪った…… 気が付くとリンダは病院のベッドにいた。 自らを吸血鬼の権威と称するシーワード博士の病院である。 博士は、彼女が女吸血鬼から恐ろしい呪いを受けたと言う。 そこにはかつてナディーンの寵愛を受けながら、 見捨てられ狂い果てた女も収容されていた。 だが、ナディーンにとってリンダは行きずりの相手ではなかった。 それは彼女ですら気付かなかった、運命的な愛。 二つの孤独な魂は、遠く隔てられた今、再び惹かれ合う。 「夜の女王が、黒い翼へとあなたを導く」 |
スペインが誇る世界随一の異常映画作家ジェス・フランコと、 夭逝の女優ソリダッド・ミランダが遺した、麻薬のようなフィルム。 エロスとタナトスが混じり合う白日夢のごとき映像世界が グルーヴィなラウンジ・ミュージックに乗せて繰り広げられる、 史上最もヒップでトリッピー、かつロマンティックな吸血鬼映画だ。 クールで洒落た感覚と、まどろむようなムードの絶妙なバランス。 エキゾティックなロケーション、モダンな建築・インテリアなど、 センス抜群の魅力的なヴィジュアルに溢れる本作は、 奇才ジェス・フランコの思い描く独特の世界が 最もキャッチーなかたちで表れた傑作である。 この作品の魅力を支えているのは、なんと言っても 吸血美女ナディーンを演じるソリダッド・ミランダの美しさに尽きる。 虚空を見据え、無表情に立ちつくすだけの姿が 最も魅力的であるとさえ思えるような、超然としてミステリアスな美貌。 少女のような愛らしさと幼さを残しながら、 露出度の高いコスチュームもさらりと着こなし、 フルヌードも辞さずに退廃的な色香をふりまくあだっぽさ。 そして、悠久の時を生き永らえてきたヴァンパイアのメランコリーまでも、 その表情だけで見事に演じてみせる。 そんな彼女の神秘性とアイドル性を兼ね備えた希有な個性を引き出したのは、 フランコ独自の怪奇ロマンティシズムに根ざした演出によるものだ。 ソリダッドの魅力を余すところなく開花させようと考えたフランコは、 自身の解釈に基づくヴァンパイアのキャラクターを彼女に与えた。 それは「ロマンティックで、メランコリックな存在としての吸血鬼」という、 彼が常日頃から夢想するファンタジーであった。 現実離れした美しさを誇るソリダッドにとって、その役柄はうってつけであり、 監督の試みは見事に成功。彼女は生涯のベストロールに出逢ったのだ。 そして同時に、ソリダッド・ミランダというミューズの登場が 奇才フランコの眠れる創作意欲に火を点け、かつてない傑作を誕生させたとも言える。 水の中のサソリや窓を伝う血の滴、ヒロインの首に巻かれた赤いスカーフなど、 数々の鮮烈なイメージを散りばめた豊穣な演出、 そしてフランコ作品らしからぬ無駄のないシャープな語り口は、 そのフィルモグラフィの中でも最高位に達するクオリティだ。 かように『ヴァンピロス・レスボス』は、 監督と女優との幸福なコラボレーションの見本のような作品である。 ゆえに、本作の公開直後に起きたソリダッドの早すぎる死はあまりに悲しい。 しかし、この奇跡的なフィルムが持つ輝きは不滅である。 たとえそれが、あっけなく儚い死と、永遠の孤独を予見して終わる 哀しいラブストーリーであっても。 本作が映画マニアのコレクションに留まらず、幅広い支持と人気を得たのは やはり音楽の素晴らしさによるところが大きい。 マンフレート・ヒュブラーとジークフリート・シュワブによる、 シタールをフィーチャーした”アシッド・ジャズ・ポップ”とも称されるスコアは、 まさに至福の恍惚を与えるサウンドだ。 ただもう、とにかくかっこいいとしか言いようがない。 90年代半ばに発売され、世界的に人気を博したフランコ作品の コンピレーション盤「VAMPYROS LESBOS : Sexadelic Dance Party」は、 日本でも渋谷系サントラ・ブームの中でDJ御用達の名盤として流通した。 ファンの間ではタイトルと音楽だけが先行して記憶されたが、 肝心の映画については長らく謎のままだった。 学生の頃、レコード屋でそのタイトルを見るたび「どんな映画なんだろ?」と 思っていた僕なんかにとっては、DVD化はとても嬉しいニュースだった。 DVDはフランス語タイトルのドイツ語版。画質は文句なく美しい。 特典として予告編や、貴重な撮影中のスナップショットなどを含むギャラリー、 さらにサウンドトラックが収録されている。その音源は前述の 「VAMPYROS LESBOS : Sexadelic Dance Party」から分割して 収録されたもので、同じくトラマンから発売されている DVD『シー・キルド・イン・エクスタシー』に残りのトラックが収録されている。 本作の虜になったファンなら、迷わず両方買いだ。(岡本敦史) 1970年・ドイツ=スペイン/カラー・98分/英語:DD(モノラル)/16:9(ビスタ) 販売開始日:2003/6/27 定価:5,040円 (税込) |
「シー・キルド・
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若きジョンソン医師は、幸福の絶頂にあった。 長年の研究が実を結び、ついに癌の特効薬を発見したのだ。 若く美しい妻と共に成功を祝い、甘い一夜を過ごす二人。 しかし、彼のレポートに対する医師会の反応は、 生命の尊厳に対する冒涜であるという激しい非難だった。 特殊なホルモンを生成するために人間の胎児を用いたからだ。 明らかに悪意のこもった糾弾の末、彼は医師免許を剥奪され、 研究成果も闇へと葬り去られる。 将来を断たれ、自暴自棄に陥ったジョンソンは 廃人同様になった挙句、衝動的に自殺を図る。 最愛の夫を失ったジョンソン夫人は、亡骸の傍らで涙しながら 彼を破滅させた4人の医師たちに復讐を誓う。 彼女はその美貌を武器に、正体を隠して彼らに接触。 巧みにセックスの恍惚へと導いては、 次々と残酷な死へと追いやってゆくのだった。 |
ソリダッド・ミランダ&ジェス・フランコのコンビによる、 凄惨な愛の復讐劇を描いたエロティック・スリラー。 『ヴァンピロス・レスボス』の耽美な夢幻世界とは打って変わって、 フランコ独自のキッチュな作風が活かされた取り扱い注意の劇物である。 いかしたロケーションを始め、モダンな意匠を散りばめながら 誇張と脱力を繰り返すパルプ・コミック調のオフビートな演出は、 まさにフランコ映画の真骨頂。 さらに、超クールなサウンドトラックが陰惨な物語をむやみやたらと盛り上げる! ダークで荒々しいロマンティシズム、エキサイティングな犯罪映画テイスト、 そして意表を突くおかしさを同時に孕んだ、異常な快作だ。 深い悲しみと憎悪のパッションを胸に秘め、その妖しい魅力で男も女も誘惑し、 恍惚と死を平等にもたらすヒロイン、ミセス・ジョンソン。 初の主演映画として本作で全面的にフィーチャーされたソリダッドは、 喜怒哀楽に満ちた熱演をもってこの大役を演じきった。 特に、次々と凶行を重ねた後、全裸でソファにうずくまり、 自らの愛の狂気に苦しみ悶えるシーンにおける彼女の鬼気迫る表情は、 女優ソリダッドのベスト・アクトと言っていい。 このシーンのヴィジュアルはLPやDVDのジャケットにも使用され、 ソリダッド・ミランダという女優のキーイメージとなった。 生活感のまるでないセクシーな衣装や、ラブシーンにも体当たりで挑戦し、 美しい肢体を惜しげもなくさらして観る者を悩殺するソリダッド。 劇中には、彼女のコスプレ七変化という嬉しい趣向も用意されている。 ハッキリ言って金髪のカツラとか全然似合ってないのだが、それもまた微笑ましい。 格別の美しさを誇る彼女の意外なウィークポイントを垣間見ることができるのも、 この映画のレアな楽しみのひとつだ。 本作は、フランコが『Diabolical Dr. Z』(65)で用いたお気に入りのプロットを基に 作り上げた、言わば“絶対に負けはない作品”である(あくまでフランコ的に)。 その内容は自家薬籠中のものであり、快調な演出には余裕さえ見られる。 フランコ自ら復讐の標的となる医師の一人として出演し、その他のメンバーに ハワード・ヴェルノン、ポール・ミュラー、エヴァ・ストロンベルグといった 常連俳優たちをタイプキャスト的に配しているのも、まるでお遊び感覚だ。 クライマックスで拷問を受けるジェスおじさんの演技を見ると、 単にソリダッド嬢にいじめてほしかっただけでは? と思わないでもない。 加えて、ソリダッド・ミランダという絶好の被写体を得たことによって、 演出も普段に増してイケイケドンドン的な勢いがプラスされている。 それは音楽の配置にも表れていて、常人には理解しがたいセンスが大暴走。 ノリのよさでは『ヴァンピロス・レスボス』を凌ぐヒュブラー&シュワブの楽曲が、 全編にわたり画面の内容もテンションも無視してひたすらグルーヴィに炸裂。 時に大間抜けな構図でさえ、有無を言わさず魅せきってしまうパワーを発揮している。 ジョンソンが自殺を図るシーンまで熱血ドラマっぽく盛り上げたりする無邪気さは なんだか可愛らしくもあり、音楽がこの映画の個性を決定づけていると言えよう。 個性といえば、通常の復讐劇では感情移入の取っかかりとなるべき モラルの所在がまるで掴めないのも本作の特徴。胎児を使って特効薬を作り出す 若き天才医学者の倫理観も怪しいものだし、それを糾弾する医師たちの言動も どう考えてもやりすぎ。どっちも自業自得としか言いようがない。 だがそんな些細な戯言も、死の天使ソリダッドの前には通用しない。 彼岸の存在となった夫に盲目的な愛を捧げる彼女にとって、 現世にある善悪だの倫理だのはどうでもいいことだ。 ただ、憎い奴らを皆殺しにするだけ。それが全て。 その無心の愛と激情に共鳴する者だけが、この映画を真に理解できるのだろう。 ゴキゲンなジャズ・スコアに乗せて ホルマリン漬けの胎児たちが映し出されるオープニングからして、 この映画には洒落にならない死の匂いと、グロテスクなムードが漂っている。 オシャレ映画としても通用する『ヴァンピロス・レスボス』ほどには 一般受けしにくい映画だが、そこがまた魅力でもある。 美しい主演女優、ノリのいい音楽、そしてバカバカしい演出が混濁し、 さらに監督の無意識を反映したモンドな怪奇趣味が全編を支配する。 それでこそジェス・フランコ作品である。 DVD本編(ドイツ語バージョン)は、画質・音質共にクリアーで申し分なし。 特典には、本作や『ヴァンピロス・レスボス』のスコアが収録されている。 オリジナル予告編、ポスター&スチル・ギャラリーもあり。(岡本敦史) 1970年・ドイツ=スペイン/カラー・73分/英語:DD(モノラル)/16:9(ビスタ) 販売開始日:2003/6/27 定価:5,040円 (税込) |
「ドリラー・キラー」 |
ニューヨーク、マンハッタン。 若き画家、リノの暮らしはどんづまっていた。 生活費さえまともに稼げず、恋人との仲も険悪気味。 せめて制作中の絵さえ完成すれば…… しかし隣の部屋にパンクバンドが越してきたおかげで、 全く創作に集中できず、苛立ちは募るばかり。 やがて血まみれの妄想が彼の精神を蝕み始める。 ある夜、リノは電気ドリルをひっつかみ、 携帯バッテリーパックを装着すると、町へと飛び出した。 通りをうろつく浮浪者どもの一人や二人、 殺したって構うものか! どいつもこいつもぶっ刺してやる!! かくして彼は、衝動殺人を繰り返す “ドリラーキラー”と化した! |
ニューヨークを拠点に映画制作を続ける孤高のバイオレンス作家、 アベル・フェラーラの記念すべき初長編監督作品。 80年代のホラーバブル時代にはかのMiMiビデオからリリースされ、 都会を舞台にした数少ないスプラッター・ホラーとして カルトな支持を得た伝説的傑作である。 "THIS FILM SHOULD BE PLAYED LOUD." 「爆音で観ろ」──映画の冒頭に刻みつけられたメッセージだ。 続いて暗闇に教会の鐘の音が遠くから聞こえ、 ドオォォォ・・・ン、という重低音と共に、"THE DRILLER KILLER"と 物騒なタイトルが現れる。やがて真っ赤に染まっていく画面。 大友克洋の『AKIRA』(88)冒頭のような威圧感みなぎる導入部は、 1979年に作られた自主制作の低予算ホラー映画としては破格に新鮮である。 間違いない、こいつは本物だ。 そう、『ドリラーキラー』はまさしく本物だった。 誰にも顧みられなくとも不思議はないこのフィルムが現在まで生き残り、 こうしてDVDまでリリースされてしまうのは、 「監督が後で有名になったから」などというチンケな理由では決してない。 この映画が真にオリジナルな作品だったからだ。 ままならない日々の中で精神を蝕まれていく主人公リノを 自虐的なユーモアを込めて演じるのは、ジミー・レインことフェラーラ自身。 観客は彼のキャラクターに対して生理的嫌悪感くらいはわずかに感じこそすれ、 そのうち共感を覚え始める。電話料金ごときでキレる滑稽な姿に笑い、 生活問題に悩む姿に同情し、あまりの困窮に表情すら失われていく姿に涙する。 そしてついにブチ切れた男のドリルが浮浪者の体にインサートされたとき、 画面に没入しながら思わず溜飲を下げていることに気付くはずだ。 それにしても電動ドリルとは、まったくなんて天才的な凶器のチョイスだろう。 傍若無人なパワーの象徴であり、誰でも手軽に扱えるので面白半分の凶行には 打ってつけ、というリアルな恐怖があるし、音がでかいのも余計にブルータルだ。 そしてもちろん、レイプのメタファーでもある。 暴れる浮浪者を押さえつけてドリルFUCKを愉しむフェラーラ自身の 嬉しそうな表情といったらどうだろう。 そう、本作では殺人を犯す側の興奮がおそろしくヴィヴィッドに描かれるのだ。 ストレス解消法としての殺人。宗教的に言うなら「魂の救済」である。 主人公がまず手にかけていくのは、彼とは縁もゆかりもない浮浪者や通行人。 そこには怨恨のドラマや理由などなく、ただこの汚れきった世界で 自分が救われるために行うセラピー的な行為として、ドリル殺人がある。 それは、レイプされた少女が世の下らん男どもを夜な夜な殺して回る傑作 『天使の復讐』(81)でも反復されるテーマだ。 つまり、殺人は楽しい。 ホラー映画という一見なんでもありのジャンルの中でさえタブー視されている この危険なテーマを、一番最初に現代人が共感しやすいかたちで描いたのが この『ドリラーキラー』ではなかっただろうか。 フェラーラはこの長編デビュー作で、シリアルキラーを恐怖の対象としてでなく、 病んだ都会に暮らす等身大の若者像として描いた。 だからこの映画はホラーではない、と言えるかもしれない。 むしろ『冷血』(67)や『暴行切り裂きジャック』(76)といった 孤独な青春を描いた映画群の系譜に連なるのではないかとも思える。 しかし、作者は言うだろう。「バカ言うなよ」と。 この映画は紛れもなく観客に血飛沫を見せるスプラッター・ホラーであり、 「痛々しい青春映画」とか「アメリカの闇をえぐる問題作」とかではない。 本作は、徹底して殺人者の目線で語られる、血まみれのジャンルムービーだ。 そのいさぎよさが、今もこの映画を孤高で危険な存在に押しとどめている。 本作の魅力を支えるもうひとつの要素、それは濃密な町の匂いだ。 ブロンクスに生まれ、N.Y.の明暗を知りつくしたフェラーラだからこそ描ける、 裏通りの危険な匂い。そのムードは近年の作品にもしっかり漂っているが、 『ドリラーキラー』はその生々しさが濾過されずに最も色濃く表れた作品だ。 同時にこの映画はレイト70'sのN.Y.風俗を切り取った貴重な映像記録でもある。 フェラーラ自身、54やCBGB’Sのあったロウアー・イーストサイドに住み着き、 画家のダグラス・メトロフ(主人公のモデルであり、登場する絵画も彼の作品)らと つるんで夜な夜なフロアーに出没するパーティーピープルの一人だった。 本作の撮影もその近辺で敢行され、当時のN.Y.アングラシーンの空気を伝えている。 何より映画自体のスピリットがパンクそのものであり、音楽ファンからの人気も高い。 DVDには、アベル・フェラーラ監督によるオーディオ・コメンタリーを収録。 撮影当時の貴重な逸話が、二日酔いを引きずったような無頼な喋り口調で語られる。 あまりにイメージ通りなので、なんとも嬉しい特典だ。(岡本敦史) 1979年・アメリカ/カラー・90分/英語:DD(モノラル)/4:3ビスタサイズ 販売開始日:2004/5/28 定価:5,040円 (税込) |