
Les Films de Jean Rollin
血に濡れた肉唇(1974〜5)
LIPS
OF BLOOD
aka:LEVRES DE SANG/BLOODY LIPS

フランス映画/カラー・95分
製作:オフ・プロダクション/スコルピオン5/ノルディア・フィルム
監督・脚本:ジャン・ローラン
脚色・出演:ジャン=ルー・フィリップ
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン
編集:オリヴィエ・グレゴワール
音楽:ディディエ・ウィリアム・リポウ
出演:アニー・ブリアン/ナタリー・ペリー/
クローディーヌ・ベッカリー/マルティーヌ・グリモー/
ウィリー・ブラック/ポール・ビシーリア/マルティーヌ・グリモー/
キャシー・カステル/ポニー・カステル/アニタ・ベルグンド/
セルジ・ローラン/ジャン・ローラン/シルヴィア・ブルドン
(物語)
パリの墓地、深夜。男2人を使って、地下の納骨堂に
白い布に包まれた何かを運ばせる中年女性がいた。
ヴェールを被った彼女は、棺桶にそれを封印させると、
墓地の入り口に十字架を残し、足早にその場を立ち去った。
場面は変って洒落た室内で行われているパーティー。
青年フレデリック(ジャン=ルー・フィリップ)は
壁に飾られた一枚の写真に目を奪われた。
荒れ果てた古城を捉えたその写真は、奇妙なまでに
彼の郷愁を掻き立てる。幼い頃、この城の近くで迷った彼は
そこで美しい少女と出会った。彼女はフレデリックを城に案内し、
一晩、彼と一緒に眠ってくれた。
父の死後、なぜか少年時代の記憶を欠ってしまった彼にとって、
美少女の面影は空虚な想い出を埋める、鮮烈な欠片でもあった。
しかし、フレデリックの話を聞いた母親は不審な態度を取り、
彼の記憶探しを執拗に反対する。
母の制止を振り切って、城の写真を撮影した女流写真家と会った
フレデリックは、彼女から詳しい話を聞ける約束を取り付ける。
時間潰しにフラリと映画館へ入ったフレデリックの前に、
突然、あの美しい少女が現れた。その姿を追って、
雨の街をさ迷ううち、彼はいつの間にか墓地へと辿りつく。
何かに誘われるように地下の納骨堂へと降りた彼は、
安置された棺桶の中で大きなコウモリが蠢いているのを発見する。
驚いて外へ逃げた彼の前に、顔に奇妙なメイクをした謎の女が現れ、
自分こそは彼が思い焦がれる古城の少女だと告げる。
その頃、地下墓地では棺桶から4人の美しい女が起き上がり、
地上へとさ迷い出ていた。彼女たちは吸血鬼であり、
墓地の管理人を毒牙にかけると、フレデリックの後を追い、
メイクをした謎の女を噛み殺した。
事態が呑み込めぬまま、写真家との待ち合わせに
深夜の水族館を訪れたフレデリックは、そこで無残に惨殺された
彼女の死体と、現場から立ち去る黒衣の男を目撃する。
男を追ったフレデリックは電車内で彼と乱闘になり、
危うく射殺されそうになるが、女吸血鬼たちの機転で窮地を脱する。
息をつかせて自宅に帰り、母に全てを説明するフレデリック。
しかし動転した母は、彼を精神病院に幽閉してしまう。
拘束衣を着せられた彼の前に、再び城の少女の幻影が現れ、
その直後、二人の女吸血鬼が彼を助け、病院から逃がしてくれる。
地下墓地に再度足を踏み入れたフレデリックの前に、
ヴェールを被った中年婦人が現れる。それは彼の母親だった。
彼女が語る忌まわしい事実。フレデリックが出会った少女は
ジェニファー(アニー・ブリラン)と言い、吸血鬼として
城内に幽閉されていた16歳の少女だったのだ。
フレデリックの父を含む村人達は彼女の毒牙にかかり、
全員吸血鬼と化して、生き残った村人に討伐されていた。
彼の母親は憎きジェニファーの胸に杭を刺し、城の地下室に幽閉。
彼女の手下だった4人の女吸血鬼もパリの地下墓地に
封じ込めたのだと言う。あの晩、フレデリックはその封印を
解いて、吸血鬼を復活させてしまったのだ。
混乱する彼に責任を取るように迫る母。
そして鮮血の吸血鬼狩りが始まる。次々に杭を打たれ、
血にまみれて死んでいく女吸血鬼たち。井戸に投げ込まれた死体は
やがて上る朝日に焼かれて真っ黒に燃え尽きて行った。
そこに現れたフレデリックの手に抱えられていたもの。
それはジェニファーの生首だった。事件は全て終わり、
吸血鬼の討伐隊は城を後にした。
だが、フレデリックは一人地下室に戻ると、棺桶の蓋を開く。
そこには昔のままの姿で眠るジェニファーが。
フレデリックが切り落としたのは、彼女と良く似た
胸像の頭部だったのだ。封印を解かれ、切り立った断崖が続く海岸で
フレデリックと共に、待ちわびた自由を満喫するジェニファー。
やがて二人は白い波が打ち寄せる海岸沿いに立ち、
彼らだけの自由を求めて棺桶に横たわり、波に運ばれて海へと流れていく。
(感想)
今まで難解、と言われることの多かったローラン映画だが、
日本語の字幕がついたことで、その内容は飛躍的?に分かり易くなった。
さすがに本作を見て、難し〜い分からな〜いと仰る方は多分いないだろう。
で、この映画。ローラン作品の中でも名作として挙げられる事が多いが、
その成功要因は恐らく、ローランの監督としての技量と、
物語・内容の身の丈がマッチしている点にある。
この映画も結局は、子供の頃に吸血鬼と会って一目惚れした青年が、
想い出の彼女と再会し、紆余曲折を経て、最後は二人だけの世界へと
棺桶で船出していくだけのお話である。
他のローラン映画と同じく、記憶の欠落が物語を進める鍵になっていて、
ローランの演出は、なくした自分の一部を探す青年の姿を、
幼年期への郷愁とセンチメンタルを軸に、丁寧に描出していく。
彼に秘密を喋ろうとした写真家を深夜の水族館で抹殺した殺し屋と
主人公の青年との追っかけシークエンスは、噴水で相手を煙に巻く
アイデアを含めて、わりと面白いお膳立てだが、何となく物語からは
浮いた印象で、ちょっとした思いつきを画面にした感じ。
「ジェニファー」という題名で撮影がスタートした本作、
ローランによれば、当初の脚本はもっと複雑な話だったそうだが、
4週間で予定されていた撮影期間は、撮影初日に製作者が
失踪してしまったために、脚本や撮影内容を再検討。
結局1週間ほど縮められてしまったのだとか。
ローランは物語上重要で、映画に必要な場面だけを選択したそうだが、
逆にそれくらいタイトに作った方が良いと言うことだろうか。
敢えて書くまでもないが、毎度オブジェ的なローラン・ヒロインに扮した
アニー・ブリアン(仏語なので最後のdは黙字だろう)は
後にアニー・ベルの芸名で日本でもその名を売ったソフトコア女優。






適当に続きます。