
クリスティーナ・ガルボ
(Christina Galbo)

クリスティーナ・ガルボは1950年の1月17日、スペインのマドリッドに生まれた。
彼女が最初に出た映画はマニュエル・サマー監督が63年に撮った
「DEL ROSA AL AMARILLO」で、この映画がスペイン国内の
サン・セバスチャン映画祭で上映された際には最優秀新人賞を受賞している。
日本では彼女の公開作がそれほど多いわけではないが、
熱心な映画ファンであれば、「象牙色のアイドル」(69)で
リリ・パルマーが校長を務める厳格な女子校に転校して来て
ジョン・モルダー・ブラウンに殺されてしまう不幸なヒロイン役を、
またホルヘ・グロウの「悪魔の墓場」(74)では、レイモンド・
ラブロックと一緒に散々恐ろしい目に遭ったあげくに
収容された病院でゾンビとなった姉に襲われ、やはり
ゾンビとなってしまう幸薄そうな美女役を演じていた女優として
記憶されているかもしれない。
新人クー・スターク(後にイギリスのアンドリュー王子との
スキャンダルが話題になった)ばかりが目立ってしまった
ペドロ・マソ監督の青春映画「新・青い体験」(75)でも
何人かいる女学生の一人として顔を見せていた。

クー・スターク(左)、かわいいからねぇ・・・。
だが彼女は本邦未公開ながらも海外ファンの間では人気の高い
マッシモ・ダラマーノの傑作女子寮ジャッロ映画、
「ソランジェ/残酷なメルヘン
(「悪魔のえじき」の
K・キートン、「野獣死すべし」のF・テスティと共演)」(71)に主演し、
1975年にはルイジ・コッツィが監督した優れたジャッロ映画
「THE DARK IS DEATH'S FRIEND」にも出演しており、
それなりの知名度を持った女優さんとして評価されているのだ。

クリスティーナはジャンル映画以外でも数多くの作品で
重要な役柄を演じており、それらはドラマや西部劇など多岐に渡る。
しかし、彼女の出演したホラーに限って言えば、彼女が与えられる役は
常にストーリー半ばにして残忍な方法で殺されてしまう場合が多かったが、
「ゾンビ特急地獄行き」のエウジニオ・マルティンが監督した
オフビートで奇妙なホラー映画「SOBRENATURAL」では、
少し進歩?が見られた。
この映画で(も)クリスティーナは
死んだ夫の亡霊に苦しめられるヒロインを演じていたが、
今回は死ぬことなく最後まで生き残る。

キャリアの初期には「汚れなき犠牲者」という役どころが多かった彼女が、
この映画でタイプ・キャストに見切りをつけられたことは、
役者として好ましい転換だったと言えよう。
現在は映画界から引退したクリスティーナ・ガルボは
スペインに住んでいるという。

↑ファビオ・テスティと一緒に微笑むC・ガルボ(「ソランジェ」から)
<フィルモグラフィ>
「Del
rosa al amarillo」(63)
「Aquella
joven de blancc」(64)
「La
ciudad no es para mi Nuevo en esta plaza」(65)
「Un dia
despues de agosto」(66)
「荒野の墓標」(66)
Dove si spara di piu
aka:La
furia de Johnny Kid(スペイン題名)
●伊=スペイン合作。日本では67年の12月1日に劇場公開され、
TVでも放映されている。共演はU・レンツィの「情無用のガンファイター」に
主演しているピーター・リー・ローレンス。監督はジャンニ・プッチーニ。
「Los
chicos del preu Dias de viejo color」(67)
「Long
Play」(68)
「Sangre
en el ruedo」(68)
「Palabras
de amor Due volte Giuda」(68) 伊=スペイン
aka:Dos
veces Judas(スペイン題)
Twice a Judas (輸出用題名))
「Las
cinco advertencias de Satanas」(69) スペイン=ポルトガル
「象牙色のアイドル」(69〜70)
The
Finishing School
aka:La
residencia
The House That Screamed
House of Evil
The Boarding School

イギリス=スペイン=フランス合作映画/105分/カラー
日本劇場公開72年6月24日(日本ヘラルド映画配給)
製作:アナベラ・フィルム・プロ(スペイン)
監督:ナルシス・イパネズ・セラドール
原作:ファン・テバール(小説から)
脚本:ルイス・ペニャフィエール
撮影:メヌエル・ベレンゲル
音楽:ワルド・デ・ロス・リオス
出演:ジョン・モルダー・ブラウン(ルイス)/リリ・パルマー(フルノー校長)/
クリスティーナ・ガルボ(テレサ)/マリー・モード(トゥパン<イレーネ>)/
マルベル・マルティン(イザベル)/ポーリーヌ・シャノール(カタリーナ)/
コンチータ・バルデス(スザンヌ)
<物語>
人里離れた森の中にある石造りの豪壮な邸宅、
そこは厳格な女院長フルノー(L・パルマー)が経営する
若い娘ばかりの寄宿学校(原題)である。
新入生の美少女テレサ(C・ガルボ)は学園内に到着して
早々に気味の悪い出来事に遭遇する。
学園にはフルノーの一人息子ルイス(J・M・ブラウン)が
いるが、彼は母親から学園の女生徒達との接触を
禁じられ、娘達以上に厳しく部屋に閉じこめられていた。
ルイスは日がな一日、気ままに読書をしたり、
クラシックな時計の収拾と分解に明け暮れて暮らしていた。
フルノーは常々ルイスに対して、学園の寄宿舎にいる
ふしだらな娘達を相手にせず、将来の妻自分のような
女性にしなさいと言い聞かせていた。

しかしルイスは母の言いつけに背いて、女生徒の一人イザベル
(M・マルティン)と密会していた。次第に人目を忍んで
デートを重ねることに耐えられなくなった2人は、
学校を抜け出す相談をする。ある晩、とうとうイザベルは
学園を抜け出すが、待ち合わせ場所に決めた温室の中で
何者かに短剣で刺殺されてしまう。

いかにもゴシック・ホラーな図(左)。右は
またしてもイジめられるガルボ。
生徒達の入浴を覗き見ようとボイラー室に忍び込んだルイスは、
鍵を降ろされてしまったところをテレサに救われる。この一件で
2人の仲は急速に接近する。
ところがテレサは寮長のトゥパン(M・モード)に呼び出され、
自分の出生の秘密をネタにイジメを受ける。
テレサの母親はキャバレーの歌手だったのだ。
この一件でテレサは学園を出ていく決心をする。しかし雷鳴の晩、
脱出を決行したテレサはやはり忽然と姿を消してしまった。
女生徒が失踪する事件が5件も続き、院長の態度に疑惑を持った
トゥパンは自ら脱出を計画する。しかし院長に見つかってしまい
必死で真夜中の館内を逃げ回るうち、追いつめられたトゥパンは
逃げ込んだ屋根裏部屋には恐ろしい何者かと対峙する。
フルノーが駆けつけたとき、トゥパンは左手首を切断され絶命していた。
フルノーの前にルイスが現れる。彼は失踪した女生徒達の肉体をつなぎ合わせ、
母親が言う<理想の花嫁>を作り上げていたのだった。
腐った死体と一緒に小部屋に閉じこめられたフルノーの
叫び声が館中に響き渡る・・・。

最後にチラッと出てくる女生徒のミイラ。
<解説>
フルチが「墓地裏の家」を作るときに参考にした
(特に屋根裏部屋の設定)とされる、ミステリアス・ロマン。
C・ガルボは中盤で喉をかき切られて姿を消してしまうが、
役どころとしては悪くない。同じく女子寮が舞台になっていて
女学生によるイジメ場面もあったアルジェントの「フェノミナ」に
比べると、こちらはグッと陰鬱でゴシック調の演出が中心。
その分、気味の悪い雰囲気は濃厚で、ゾクゾクするような
展開が楽しめる。嵐や風、燭台やカーテンなどの小道具も
揃っていて、さすがナルシス・セラドール、手堅い仕事ぶりだ。
エンディングで小部屋に閉じこめられた院長の絶叫が響くなか、
モルダー・ブラウンが独り言を話し続ける展開はかなり後味が悪い。
いっそのこと館ごと焼け落ちてくれたりすれば、
もっとカタルシスのある展開になるのになぁ・・・。

モルダー・ブラン曰く、本作への出演動機は「自分にとって
始めての主演映画であり、監督セラドールにとっても
初の劇場用作品だったから」だそうだ。
インタビュアーから内容の不備を指摘された彼は、
「僕には役柄を選べるだけの実力もないし、
お金も必要だったから依頼される作品には片っ端から
出なきゃならないんだ。「象牙色のアイドル」はスペインの作品だけど、
ハマーの映画と同類だし、それにハマー作品に比べたら、
この映画はお金がかかってるしね。」と語っている。
「ソランジェ/残酷なメルヘン(V)」(71)
伊=独
Cosa avette fatto a Solange ?
aka:Das
Geheimnis der grunen Stecknadel (独題)
What Have You Done to Solange ? (英題)

●ファビオ・テスティ扮する女学園の教師と不倫関係にある女学生が
ガルボの役。2人が密会していた森の中で、偶然、別の女学生が
性器にナイフを突き立てられて惨殺された。犯人は次々に学園の女生徒を狙い、
ついにガルボもバスタブで溺死させられてしまう。テスティは冷え切った関係の
妻(カリン・バール)と協力して真犯人を追いつめる。それは不法堕胎の後遺症で
精神異常に陥ってしまった娘(「悪魔のえじき」のカミール・キートン)の
復讐に狂った父親の犯行だった・・・。

大御所E・モリコーネの音楽、A・マサチェッシの素晴らしい撮影、
監督マッシモ・ダラマーノの冴えた演出が融合したジャッロ映画の代表作。
「悪魔の墓場」(74)
Fin de semana para los muertos 伊=スペイン
aka:No
profanar el suenode los muertos (製作タイトル)
Non si deve profanare il sonno dei morti (伊題)
The Living Dead at the Manchester Morgue (英題)
Don't Open the Window (米題)

スペイン=伊合作映画/カラー・93分/日本劇場公開75年6月(配給:ヘラルド)
日本版ビデオ/LD(にっかつ)
製作会社:フラミニア・モーション・ピクチャーズ=
スターフィルムズ(マドリッド)=キャピトリーナB.C.(ローマ)
製作:エドモンド・アマティ
監督:ジョルディ・グロウ(ホルヘ・グロウ)
脚本・原案:サンドロ・コンチネンザ/マルチェロ・コシア
ミグエル・ルビーノ/ジュアン・コーボス
撮影:フランシスコ・センペレ
編集:ヴィンセンゾ・トマッシ/ドミンゴ・ガルシア
特殊効果:ジュアン・アントニオ・バランディン/ルチアーノ・バード
特殊メイク:ジャネット・デ・ロッシ(オプチカル効果担当?)
音楽:ジュリアーノ・ソルジーニ

出演:
レイモンド・ラブロック(ジョージ)/クリスティーナ・ガルボ(エドナ)/
アーサー・ケネディ(マコーミック警部)/ジャニーレ・メストーレ(ケイティ)/
フェルナンド・ハイベック(ガズリー)/ジョーゼ・ルイズ・ライファンテ(マーティン)
「Olvida los tambores」(74)
「女囚監獄 (V)」(74)
Prigione
di donne
aka:Sex
Life in a Women's Prison
Women's Prison
イタリア映画/95分/カラー/日本劇場未公開(ビデオ発売)
製作会社:サウザンド・チネマトグラフィカ
監督:ブルネッロ・ロンディ
脚本:レイラ・ブオンジョルノ
ブルネッロ・ロンディ/アルド・セメラリ
撮影:ジーノ・サンティーニ
出演:マルティーヌ・ブロシャール(マルティーヌ)/
マリル・トーロ(スザンナ)/クリスチーヌ・ガルボ(シスター)/
エルナ・シュラー/カティア・クリスチーヌ
<物語>
フランス人女子学生マルティーヌ・フラジアンは友人と2人で
イタリアを旅行中、郊外の洞窟でヒッピー達が麻薬を楽しんでいる
現場に遭遇した。彼等のうちの一人、黒髪の少女が具合悪そうなのに
気付いたマルチーヌが、彼女を介抱しようとしたとき、突然警察が
やって来て、ヒッピーらと共にマルチーヌをも逮捕してしまった。
身に覚えの無い麻薬所持の罪で投獄されたマルチーヌは
平凡な生活から一転、刑務所暮らしを強いられる。
いかにも身持ちの悪そうなスザンナ(M・トーロ)、政治犯のグラチア、
ストリップ癖のある黒人女イザベル、奔放なジーナらと同室になる。
最初は乱暴で下品な女囚達に嫌悪感と戸惑いを感じるばかりだった
マルチーヌも、様々な事件を乗り越えるうち、彼女らに感化されていく。
ある日、海を撮影した映画を見ていた女囚達の欲求不満は限界に達し、
仲間の女囚の一人が放置されて死亡したことで、日頃の不満が
一気に暴力となって爆発する。狂った女囚達はシスター(C・ガルボ)を裸にし、
記録を焼き払うなど暴動をエスカレートさせるばかり。刑務所の外に出てきた
女囚達を偶然撮影に来ていた映画スタッフがとらえ、彼女たちは思いの丈を
ぶちまけるが、騒動を鎮圧しに駆けつけた警官と乱闘になり、その騒ぎの中で
自由を主張するグラチアが衝動的に建物の塔から飛び降り自殺を図ってしまう。
この騒ぎでグラチアと同室だった4人は孤島の刑務所送りとなり、
単調な苦悩の日々が続くが、マルティーヌに突然無罪釈放の命が出され、
彼女はこの奇妙な体験を思い出しながら刑務所を後にするのだった。

↑女囚を蔑んだ目で見つめるC・ガルボ。
そういう事をしてると・・・。
<解説>
劇中で自分と同じフランス人を演じる女優、マルティーヌ・ブロシャールは
この映画以外に「修道女ジュリアの告白/中世尼僧刑罰史(V)」(83)、
「レディ・ドール2(V)」(87)、「ラムール<愛>」(69)等に出演している。
この映画でのガルボは女囚を監視する尼さんの役。珍しく女囚達をたしなめたり
軽蔑した態度を取ったりと、優位に立つ役柄だったが、後半いきなり起きた暴動で
衣装をひっぺがされて全裸にされ陵辱される展開が用意されていた。
うーん、この映画でも不幸だった・・・。
その他の出演者ではエルナ・シュラーが「雪原に燃ゆ」(72)や、「悪魔のホロコースト」(76)、
ドナルド・プレザンスが主演したホラー映画、「スペクターズ/鮮血のローマ」(87)等に、
またカティア・クリスチーヌ(キャシー・クリスティーン)が「ゼロ/奪還!最高軍事機密」(68)、
「愛して愛して子猫ちゃん」(70)、「スペース・ウルフ:キャプテン・ハミルトン」(77)等に
それぞれ顔を出している女優のようだが、やはり若干馴染みが薄い。
監督のブルネッロ・ロンディは1924年11月26日、イタリアのティラーノで生まれた。
F・フェリーニ映画の脚本を中心にキャリアを築き、59年の「甘い生活」、
「ローマで夜だった」(60)、「81/2」(63)、「魂のジュリエッタ」(64)、
「オーケストラ・リハーサル」(78)、「女の都」(80)等を担当している。
それ以外にはナタリー・ドロンとスーザン・ストラスバーグが共演した
「姉妹」(69)があり、この作品でもレイラ・ブオンジョルノ、アルド・セメラリらと
共同で脚本を書いている。単なる娯楽映画には終わらないプラスαの魅力は
さすがフェリーニ映画じこみ(特に映画撮影隊の喧噪描写とか)と言えるのかもしれない。

↑女囚達に暴行されるC・ガルボ。やっぱりね。
TV放映時の別題として「女囚暴動(旧)」、「女囚暴動/
サバイバル・ヒート2(新)」がある。ビデオの発売元 は
日本ヘラルド映画、販売元はポニーキャニオン。
aka:The
Dark is Death's Friend
The Killer Must Strike Again
伊=仏合作映画/カラー・90分/日本劇場未公開(ビデオ未発売)/
テクニスコープ(イタリア版はほぼヴィスタ・サイズ)
製作会社:アルビオーネ・チネマトグラフカ
ギット・インテルナツィオーネ(ミラノ)/カンヌ・シネ(パリ)
監督:ルイジ・コッツィ
製作総指揮:ジュセッペ・トルトレーラ
原案・脚本:ルイジ・コッツィ/ダニエレ・デル・グイディース
台詞:アドリアーノ・ボルゾーニ
撮影:リッカールド・パロッティーニ
キャメラ:ピエールジョルジョ・ポッズィ
編集:アルベルト・モーノ
編集助手:エリオ・モレッティ
音楽:ナンド・デ・ルーカ
助監督:ルチアーノ・サクリパンティ
出演:ジョージ・ヒルトン(マイナルディ)/マイケル・アントニー(殺し屋)/
フェミ・ベニュッシ(頭の弱いブロンド)/クリスティーナ・ガルボ(ラウラ)/
アレッシオ・オラーノ(ルーカ)/エドゥアルド・ファヤールド(警察官)/
テレサ・ヴェラズケズ(ノーラ・マイナルディ)/ダリオ・グリアッキ/
ルイジ・アントニオ・グエッラ/カルラ・マンシーニ/シドニー・ローム
「新・青い体験」(75)
Las adolescentes
aka:The
adolescents
スペイン=英=米合作映画/カラー・99分/
日本劇場公開77年7月(ビデオ:WB)

製作会社:ペドロ・マソ・プロ
監督・製作:ペドロ・マソ
脚本:ペドロ・マソ/サンチャゴ・モンカーダ
撮影:ジョルジ(ホセ?)・ヘレーロ
セット:ジル・ペランド
音楽:ジャン・カルロス・カルダロン
出演:
クー・スターク(アナ)/アンソニー・アンドリューズ(ジミー)/
スーザン・プレイヤー(カルラ)/ビクトリア・ベラ(ロザンナ)/
エドワルド・ベア(シレーノ)/マリア・ペルシー(ミス・ニールソン)/
トレバー・トーマス(ジャマイカ人)/クリスティーネ・ガルボ(エレン)/
ビクトール・プチ(アンドレ)/ベアトリズ・ガルボ(ダニエル)/
エドュアルド・ファーヤルド(アントニオ)/クエタ・クレヴァー(ルイザ)/
イザベル・マ・ペレソ(クリス)/アドルフォ・アリセス(ミゲル)/
ジャネス・メルセス(マーガレット)/パトリシア・メゾン(エミリー)/
アーサー・ハワード(ケリー校長)/モニカ・ユーロー(オルガ)/
ジャック・テイラー(ハンソン氏)
<物語>
スペインの避暑地に住む美少女アナ(スターク)の両親は、
社会勉強も兼ねて、年頃の娘をロンドン近郊にある格式の高い名門校
リージェント・スクールに留学させることにする。
アナの入った寄宿舎には、素行の悪いイタリア娘のカルラ(プレイヤー)、
メキシコ人のロザンナ(ベラ)らがおり、特にカルラは主任教師の
ミス・ニールセン(ペルシー)から要注意人物としてマークされていた。
ある日、休暇を貰ってロンドンに住む叔母を訪ねたアナは、
同じくロンドンに繰り出したカルラ、ロザンナとカフェで落ち合うが、
二人はディスコで自分たちをナンパしてきたジャマイカ人(トーマス)と
DJのジミー(アンドリューズ)を連れていた。誘われるままにアナも
ジャマイカ人の部屋に遊びに行くことになり、そこで彼女達は
フリー・カメラマンのシレーノ(ベア)と出会う。シレーノはカルラに
ヌードモデルのアルバイトを持ちかけ、ジャマイカ人とのセックスを
写真に収めた。しかし、出版者に持ち込んだカルラの写真は高く売れず、
逆に冗談半分で写したアナの写真が高く評価される。
シレーノは何とかアナのヌードを写真に収めようと計画を練り始める。
数週間後、ジミーがアナを訪ねてくる。ジャマイカ人の部屋での
非礼を詫び真摯な態度で接してくるジミーに、アナは好意を感じた。
そんな二人をロザンナのジェラシーに燃える瞳が見つめていた。
週末、ジミーと一緒にベッドインしたアナは、真剣な恋に落ちる。
しかし、ジミーはシレーノから金を貰って、セックスの現場を写真に
撮らせていたのだ。しかもジミーはミス・ニールセンのヒモで、
ニールセンは学園の女生徒を騙して、ジミーやシレーノにヌード写真を
撮らせ、それをデンマークに流している張本人だったのだ。
既にアナのセックス写真はデンマークのポルノ雑誌に大々的に
掲載されていた。今では本気でアナを愛し始めていたジミーは
自責の念に駆られ、ニールセンと激しい言い争いを展開した。
一方、アナの写真が稼ぎ出す金に目が眩んだシレーノは
アナを騙して、ジャマイカ人の潜むアパートに呼びつけ、
本番写真を撮影しようとする。あわやという時にジミーが駆けつけ、
激しい乱闘になる。警察が駆けつけ、ジミーもシレーノも逮捕される。
ミス・ニールセンの犯行も明るみに出た。
学校当局はアナ、カルラ、ロザンナを廃坑処分にする決定を出した。
身柄を引き取りに来る両親を待ちながら、ロザンナはアナに抱きついて泣いた。
アナのロンドン留学、そして初恋は無惨な結果を迎えた。
しかし、ジミーが本当に自分を愛し始めていたことだけを心の支えにして、
アナはロンドンを後にする・・・。
<解説>
少年の初体験を描いて大ヒットしたイタリア映画「青い体験」、
「続・青い体験」に続いて、今度はロンドンに留学した少女を主人公にして
性への目覚めを描いたのがこの映画。
ヒロインのアナに扮するのはプロデューサーの父と女優の母の元で
NYに生まれたクー・スターク。ロンドンに住んでいた彼女は
「ロッキー・ホラー・ショー」など数本の映画に早く出演した後、
この映画の主役に抜擢され、一躍注目を浴びた。
主演第2作目に当たる「エミリー」も巨匠ロナルド・ニームの息子
クリストファーが製作を担当した性春映画だった。
その後、日本で知られているスタークの出演作は84年の
「エレクトリック・ドリーム」、「マルキ・ド・サド/第三の悪徳」(88)などがあるが、
英国王室のアンドリュー王子との恋愛スキャンダル女優としての方が有名か。
アナが思いを寄せるDJの青年には、「曉の七人」でティモシー・ボトムズと
共演して強烈な印象を残したアンソニー・アンドリューズが、
アナのルームメイトで、非行少女のイタリア少女カルラには、
アメリカ生まれのスーザン・プレイヤーが扮している。プレイヤーは76年に
大御所カルロ・ポンティに見出され、S・マルティーノの青春(性春?)映画
「セクシー・リレーション」に主演した。
主任教師のミス・ニールセンを演じるのは、スパニッシュ・ホラーの
常連女優マリア・ペルシー。他に校長役でオッソーリオ映画に何本も
出演したジャック・テイラー、「風とライオン」にも顔を出していた
スペイン生まれのエドワルド・ベア、ジャマイカ生まれの黒人モデルで、
これがデビュー作になったトレバー・トーマス、「風と共に去りぬ」で
アシュレー役を演じた故レスリー・ハワードの弟、アーサー・ハワードが
校長の役、ジェス・フランコ映画の常連、エドュワルド・ファーヤルドが
アントニオという役で顔を見せている。
監督のペドロ・マソは「試験結婚」で日本に紹介された監督。
劇作家のサンチャゴ・モンカーダが脚本に協力。
ジョルジ・ヘレーロが担当した撮影は、ロンドンのハイドパークや
ピカデリー・サーカスなど名所を始め、当時のロンドン風俗を上手く
カメラに収めている。音楽はジャン・カルロス・カルダロン、
スペインの人気ポップ・グループ、モセダートが主題歌を歌い、
(本当かどうか分からないが)ヨーロッパでヒットを記録したという。
「La
corea」(76)
「La
amante ingenua」(76)
「Hasta
que el matrimonio nos separe」(76)
aka:Till Divorce Do Us Part
「El
ultimo guateque」(77)
「Las siete magnificas y audaces mujeres」(78)
「Sobrenatural」(81)
aka:Supernatural
「Sufre,
mamon」(87)
aka:Suffer Mama
「El
ultimo guateque 2」(88)
aka:The Last Party II
「Sueltate
el pelo」(88)
aka:Let Down Your Hair
<ジョン・モルダー・ブラウン>

●4歳で舞台学校に入学し、以来映画界入りした
ジョン・モルダー・ブラウンは、ブロンドの髪と
ブルーの瞳を持った美少年俳優として、
70年代には女性ファンを中心に人気を集めていた役者さん。
両親が早くから離婚し、父親に育てられた彼は
楽天的でジョークの好きな現代っ子(70年代当時)だった
ようだが、母親の不在は彼の横顔に微妙な影を落としていたようす。
●人懐っこいモルダー・ブラウンは「吸血鬼サーカス団」で
共演した小人俳優のスキッパーと妙にウマが合ったらしく、
GFのクリスチーヌを交えて良く一緒に遊んでいたようす。
「吸血鬼サーカス団」に対する彼ら3人の意見は
一致していたようで、ズバリ「ダメな映画!クズ!」だそうだ。
(もっとも実は3人とも映画を観ていないというオチもついていたが)
●「早春」に出演したことについて
モルダー・ブラウンが「最も楽しかった経験さ。だって
スコリモフスキーを知ったんだもん(原文まま)。」と語る本作、
監督の演出について「視覚的というか、現場の雰囲気や
フィーリングを重視してジャンジャン変更があるんだ。
皆で大騒ぎしながら撮影が進むんだよ。活気があって面白いんだ」と評価。
共演したジェーン・アッシャーについては「彼女ほどの
美人はいない」んだそうだ。但しモルダー・ブラウンが好きな
タイプの女性は小柄で肉付きが良く、ゴムマリみたいに
弾力性のある女性、つまりは身体専ってわけか。
●同じくスコリモフスキーが監督した未公開作
「キングとクイーンとジャック」では、共演のジナ・ロロブリジータと
言葉のバリアが元で喧嘩。関係が気まずくなったらしい。
写真は見たことがないが、スコリモフスキーはハンサムだそうで、
最近は俳優として「ラスベガスをやっつけろ」などの作品に出演している。
●ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ルードウィッヒ」では
撮影中に事故に遭い、足に鋼を入れて40針を縫う大怪我をし、
ファンを心配させたモルダー・ブラウン。
ヴィスコンティ演出については「彼は無口で細かいところは
全て助監督任せ。実際に本番でする動作についての
指示くらいしかくれないけど、それが精密で熟慮断行。
現場はとてもスムーズだよ」と語っている。
●「早春/DEEP
END」
・・・ポランスキーの「水の中のナイフ」で脚本を担当し、
注目を浴びたイエジー・スコリモフスキーの監督作。
(ポランスキー同様、イギリスへ移っての仕事だが、
スコリモフスキーは後に故国ポーランドへ戻ったらしい。)
15歳のモルダー・ブラウンが、ロンドンにあるプールつきの
公衆浴場に接客係として雇われる場面から本編がスタート。
同じ職場に勤める年上の女性従業員(ジェーン・アッシャー)は、
ウブな彼に対して気まぐれに優しくしたり、
かと思えば嫌がらせをするような小悪魔的な態度を取る。
年増の客(ダイアナ・ドース)らに誘惑されたりして
仕事の裏事情も分かってきた少年は、体育教師とつきあっている
アッシャーを付け回し始め、その行動は次第にエスカレート。
彼女に似ているストリップ小屋の立て看板を盗み出し、
映画館では婚約者とシートに座る彼女の体を背後から触ったり・・・。
ある日、喧嘩した拍子にアッシャーの婚約指輪から
雪の中に落ちてしまった小さなダイヤを探すべく、
二人はその場の雪をポリ袋に入れてプールに運び、
熱湯をかけて探し始めるが・・・。
本編には有名なプールの場面を含めて、ヌードシーンや
セックス場面が何度となく出てくるが、それらが決して
性と結びつく肉感的な演出を伴っていないのは一目瞭然。
まだ「青春」に至るまでにはやや早い思春期の少年が
見せる不安定な心情と、傍目には異常とも取れる
暴走行為の数々が、固い新芽の中で綻び始めた生命の
躍動感を感じさせるような「早春」というタイトルに
象徴されているようで面白い。
大人の性を持った年上の少女が現れたことで、
自分のモノセックスな世界観が変化していくことへの、
少年の戸惑いと異性に対する純真な興味、
それと表裏一体に顔を出すエゴイスティックな自己。
そして本能のままに奔放な振る舞いを続ける少女が放つ
まさに"女性"的な匂い。劇中に登場する二人の関係を
赤裸々に生々しく、同時にふてぶてしい図太さを備えた
空気感を一貫して固持しながら描いてみせた演出は出色。