1970年代、フランコ監督の黄金期には
Vampyros Lesbos,
Sie totete in Ekstase , Der teufel kam aus Akasawa に
代表される西ドイツのプロダクションとの
コラボレーションによる傑作が生み出された。
その後、本人が第2の故郷と語るフランスはパリを中心に
活動拠点を築いた監督は、限りなく不健全な映像を放ち続けた。
そのすべてが18禁、ヨーロッパ・ローカルでのみ
許容され得るであろう内容は、とりわけ悪魔憑き、
精霊交感、サドマゾといった当時のLSD等に依存する
サイケデリック・カルチャーそのもの。
しかし、そのショッキングな内容とは裏腹に、
フランコ作品はパブリックの話題とはならなかった。
当時、低予算の映像作品は無数に存在し、
それらは一様に駄作のレッテルを貼られた。
映像作品を総合芸術と大衆作品に線引きしたマスは、
独立系の監督による作品など歯牙にもかけなかったからだ。
反面、一部の若者達はフランコ監督作品を心待ちにしていた。
現在のようにカルト映画がそれなりのポジションを
確立する以前の話、リアルタイムでフランコ監督の
70年代の作品を見てきた友人は語る。
「いけないものを見る感覚だった。
両親や友達には絶対話せない趣味だったよ。」
この Les experiences erotiques de Frankenstein を
見ればその言葉がわかる。監督自身が述べているように
詩人アンドレ・ブルトンを中心とした思想・芸術
「超現実主義 (Surrealisme)」の影響を色濃く反映した、
監督ならではの耽美かつ倒錯的な世界感。
そこには、抽象的であれ確実にフランコ監督の持つ
「闇の美学」が存在する。日本では、
それこそ澁澤龍彦氏らこそが取り上げて然るべきであった。
当時から無名ではあったがフランスの女優
Anne Libert (アンヌ・リベール)演ずる
「盲目の半人半鳥女」は美しい。
この登場人物はマックス・エルンストの怪鳥を想起させ、
半裸の女性という要素を加味したことで
文字通り妖艶なキャラクターとなった。
ヨーロッパローカル作品になじみのない人には、
永井豪氏のデビルマンに登場するデーモン一族「シレーヌ」と
でも形容すれば話は早い。実際、漫画の少ない
(ほぼ存在しない)ヨーロッパでは大衆映画こそが日本の漫画、
テレビ作品に相当するものであった。
アンヌ・リベールはモニカ・スウィンらと同じく
1970年代のフランコ作品の常連。
Dracula contra Frankenstein (1973)
では冒頭、ヴェルノン演ずるドラキュラの最初の餌食となった。
出演時間は5分足らずだが、ここでアンヌがブーツを脱ぐ
シークエンスは最高にセクシーなので是非見て欲しい。
とりわけ今作品の冒頭、エンディングにおける
彼女のローアングルからの上半身カットは
作品の詩的叙情感を象徴しており、翌年の傑作
La comtesse noire ('73) (邦題 :
吸血処女イリーナ
/訳 : 黒き伯爵婦人)
でも見られたアイデア。
半裸の、この世のものではない女性が
霧立ち込める森をただ一人、
何かに堰きたてられるかの様に彷徨う。
そして、時折交錯する暴力的なイメージ、
例えば鳥女の食人シーンは余りにも妖しく残忍。
プリミティブな暴力はフランコ監督得意とする描写であり、
1980年のゴア映画の影響を被った作品しか知らない方には、
フランコ芸術のなんたるかを、その眼に焼き付けさせてくれるだろう。
また鮮烈極まる色彩感覚も見逃せない。
監督のスペインの血がそうさせるのだろうか。
紺碧の背景と表現主義的なまでに赤い血、
そして黄金に輝く体を持つフランケンシュタインの怪物。
脳裏に焼き付いて離れない。
作品後半には黄金のフランケンシュタインが、
拉致された主人公の男女を鞭打つシーンが存在する。
このスクリーンショットは比較的多くの関連書籍で
紹介されているので、目にした方も多いだろう。
陰惨になりがちなシーンではあるが、
決して美観を損なわぬ人物配置やスキームに、
当時の監督の類稀なる感性が伺い知れるのだ。
最後に物語の概要。実は原題にあるような
フランケンシュタイン作品ではなく、
人造のアダムとイブによる新世界創造を描いた物語。
ヒッピームーブメント渦中の宗教的エピソードに
古典ホラーとサイファイをミックスした、
などと言えば、語弊はあれど誰しも理解出来るだろう。
似た様なサブジェクトはフランスの鬼才「ジャン・ローラン」の
劇場処女作 Le viol du vampire
(吸血鬼の強姦 /未公開)にて扱われている。
フランコ監督とローラン監督の共通点は多い。
キャストは、お馴染みのアワード・ヴェルノンが
新人類創造計画の旗手カリオストロ伯爵を演じ
先述の裏ヒロインであるアンヌ・リベール演ずる鳥女が、
その助手として暗躍する。そしてブリット・ニコルズ
(Britt Nicoles) が端役で出演しており、
フランコ監督もカリオストロ伯爵の助手役を演ずる。
この助手は、カリオストロ伯爵がフランケンシュタインに
生命を吹き込むための例の古典的実験シーンに登場。
疑問が湧くほど過剰に怯えつつ、
震えまくる手で電源レバーをあげる様はファン必見。
余談だがフランスでも、日本の水曜ロードショーのような
テレビでの映画放送枠があった。私が所持しているのが、
そのテレビ放映のダビングカセットで、
作品の前に水野晴男氏が行っていた様な「前説」がある。
なかなか美人の女性キャスター登場し、
一通りの作品概要・・・ほとんど別作品の紹介をした後に
「エロスと実験室の究極の遭遇をお楽しみください」という、
これまた超現実な言葉で作品観覧へと誘ってくれる。
Kazu Spara 31.07.2003
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